子育てしましょ♪

「癒される」
「確かに癒されるよい」
二人の目の前には横になった子供。
さきほどまで遊んでいたが今は疲れて眠っている。
「本当に大人しいよな」
「手間がかからなくて助かるよい」
「本当にこれまで散々だったからなぁ」
今までのことを振り返りしみじみと思う二人。
「まぁイゾウの時は楽だったけどねい」
「お前だけな!」
「まだ根に持つのかい。男らしくないよい」
「うるせっ!元に戻ってからもからかわれてもう散々なんだよ」
「泣くなよい、サッチ……」
「慰めてくれんの?」
「泣くとうざいからねい」
「お前もひどいね!」
「うん……?」
二人の声にジョズが呻いた。
「あっ、起きちまったじゃないかい」
「え?俺のせい?」
「騒いでたのはお前だろい」
眠っていたジョズが目を開けて起き上がる。
まだ眠いのか目を擦っている。
「まだ寝ててもいいんだぜ?」
サッチがその頭を優しく撫でる。
けれどジョズは首を振った。
そして少し遠慮がちにお腹に手を当てる。
「何だい?」
「ああ、腹減ってんのか」
サッチの言葉にこくりと頷く。
「よし!俺がとっておきのおやつ作ってやるよ」
また頭をぐりぐりと撫でればちょっと照れながら笑う。
「サッチ、俺には?」
「ちゃんと作ってやるよ。だからそんな物欲しそうな顔すんな」
「ホットケーキにしてくれよい」
「おい、ここはジョズに聞くとこだろ」
「お前さんもホットケーキがいいよねい?」
半分無理やりに問う。
ジョズは頷いた。
「ほら、いいってよい」
「強引だな。わかったよ。待ってろ」
立ち去ろうとするサッチをジョズが追う。
「何?お前も来る?」
その言葉に何度も頷くジョズ。
「じゃあ、一緒に作るか」
ジョズの顔が輝く。
そして二人で部屋を出て行く。
「待てよい。俺は?」
「お前に料理は無理だろ」
自分だけ仲間外れにされて引き留めるマルコにサッチが言う。
「何だとい?」
「黒焦げの目玉焼きを忘れたとは言わせねぇぞ。いや、もうあれは卵ですら無かったな」
サッチの言葉にマルコは悔しそうな顔をする。
「あれはたまたまだよい!」
「へぇ、それじゃ甘くて誰も食べれなかった砂糖カレーや水のようにどろどろに溶けたお粥は幻だったのか?」
「うっ……今度は大丈夫だよい!」
次々と上げられる失敗例に返事を詰まらせるものの引き下がる気はないようだ。
「仕方ねぇな。その代わり俺の言う通りにしろよ?」
「……わかったよい」
渋々マルコは頷いた。



「よし、それじゃ粉をふるって」
これから楽しいクッキングだ。
マルコもジョズも言われたとおりにエプロンを身に着けている。
「振ればいいのかい?」
「意味が違う!マルコ!」
粉を振り回そうとするマルコを慌ててサッチが止める。
その傍らでジョズがふるいを取り出して粉をふるい出した。
「おっ、ジョズえらいな。ちゃんとわかったのか」
頭をまた撫でられてジョズは嬉しそうだ。
「それくらい俺にも出来るよい」
ぶすっとしてマルコが言う。
「嘘つけ」
「ちょっと勘違いしただけだろい!」
「あーわかった、わかった。マルコ、卵割ってくれ」
マルコの手に卵渡す。
マルコは勢いよくボウルに卵を叩き付けた。
「わっ、バカ!」
卵が砕けて潰れた黄身と殻が混じり合う。
「あーあ」
残念そうなサッチの声にマルコも閉口した。
そんなマルコにジョズが近づいてボウルの中の殻を取り出す。
そうして残りの卵も綺麗に割ってしまった。
「ジョズの方が断然上手いな」
にこにこしながらジョズを褒めるサッチにマルコはエプロンを外した。
「……もう出てくよい」
そう言ってドアの方に向かう。
「もういいのか?」
「俺が居ても邪魔だろい」
立ち去ろうとするマルコをジョズが追いかける。
そして服の裾を引っ張った。
「何だい?」
マルコが振り向けば先ほどのボウルを差し出す。
「え?」
手を伸ばしてボウルをマルコに無理やり渡し、泡立て器も差し出す。
「混ぜろってよ」
驚くマルコにサッチが笑いながら言った。
「一緒にやってやれよ」
「……一緒にやりたいのかい?」
マルコの言葉にジョズがこくりと頷く。
「丁寧に混ぜろよ」
サッチの言葉に二人でゆっくりとボウルの中身をかき回す。
やがて出来上がった中身をサッチが綺麗に焼いていく。
美味しそうな匂いが漂う。
「ほら、出来たぞ」
出来上がったホットケーキに生クリームとフルーツ、それに蜂蜜を添えて二人に差し出す。
「頑張ったからご褒美な」
おまけにサッチ特製の甘いココアもつける。
「それじゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
サッチの掛け声に二人も手を合わせる。
美味しそうにホットケーキを頬張るジョズを二人は満足そうに眺めた。

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