小説3 | ナノ
▽ 頂の景色


日向が打った速攻をもう一度やろう何度も何度も影山は日向に速いトスを上げる
でもそれはなかなか決まらず月島はまたも挑発する

「人には向き不向きがあるんだからさ」

それは日向のスパイカーとしては致命的な欠点である身長のことを言っているようでそれは日向もわかっていることだった。でも日向はそれでも前を向く目の前にいる月島に対して自分の憧れの存在であるそれを思い出しながらまっすぐに言った

「あんな風になりたいって思っちゃったんだよ
だから不利とか不向きとか関係ないんだこの身体で戦って勝って勝ってもっといっぱいコートに立ちたい!」

日向がそう言っているとき影山に視線を向けると何かが変わったような目をしていた
そして日向のとなりに行って月島をみる

「……スパイカーの前の壁を切り開く…その為のセッターだ」

少しずつ、ほんの少しずつ独裁者な王様は変わっていく
それでもすぐに変わるわけでもなくて影山が日向にトスを上げるが昔みたいにスパイカーをおいていくトスで素早い日向でもそれは追いつくのがやっとだった
何度やってもタイミングが合わず言い合いになる2人の間に私の隣にいたはずのスガが入る


「それじゃあ中学の時と同じだよ」

自分より大きい後輩に一瞬退くけれど影山が言う日向の武器を影山自身が殺しているのではないかと言う
うまく言葉が出ないのか少ししどろもどろになりながらだけれど必死に影山に伝える


「……俺も…お前と同じセッターだから去年の試合…お前見てビビったよスバ抜けたセンスとボールコントロール!
そんで何より…敵ブロックの動きを冷静に見極める目と判断力!!…俺には全部無いものだ」


3年間見てきた彼のプレーが決して悪いわけじゃない
ただそれを上回る技術を影山が持っているだけだった。それは確かに埋められないものなのかもしれない…少し悔しそうな顔をする彼を見て何もいえない自分がイヤになった


「技術があってヤル気もありすぎるくらいあって何より…周りを見る優れた目を持ってるお前に仲間のことが見えないはずがない!!」


その言葉に何か思いついたのか影山は日向に色々言っていたけど最後に何かを思いながら言い放つ

「お前の1番のスピード1番のジャンプでとべ
ボールは俺が持って行く!」


その意味を日向に説明していてスガが横に戻ってきた


「いや〜なんか緊張した〜」
『お疲れ。ねぇ、』
「ん?」
『私スガの凄いとこ知ってるよ。影山との実力差があったとしてもスガにしか持ってないものちゃんとあるよ、』
「及川…」
『だから、前向いて正々堂々としてればいいんだよ』
「ありがとう…」


スガにお礼を言われて少しだけむずがゆい感じになったけれど試合は進んでいくのでコートでやっている試合に視線を戻す
丁度影山がトスを上げる瞬間だった
影山がボールをそこへピシャリとあげた瞬間日向の手がボールにあたり良い音を響かせながら相手コートに入る
数秒してから日向はボールが当たったと嬉しそうに言っていた
それが当たり前なはずなのにものすごく驚いた顔をしていてなんだと思っていたら大地が月島に説明しているのが聞こえてきた
どうやら日向は目をつぶってジャンプし影山が日向の掌にピンポイントでボールをあげたということらしい
日向のバカ正直に影山を信じてスパイクする姿に思わず笑ってしまった

『…はは!』
「及川?」
『面白いことになったねこの試合!』


その言葉通り日向へのトスは失敗もするがそれ以上にトスの精度が段々と上がっていく
そしてまた日向へ上がるトス
今度はトスがあがる前に日向がブロックについている月島と山口をかわしてブロックが間に合わないそのときブロックを置き去りにして放たれたそのスパイクはキレイに決まった
そしてこの後マッチポイントを迎え日向をマークした月島の裏をかきフリーになった田中にトスが上がり1セット目を日向、影山チームが奪った



×××××××



ピピーッと審判の笛がなる
試合は終了しセットカウント2−0で日向、影山チームが勝った
4人の一年生は息が上がっており大分疲れたようだったが日向と影山はなんだかスッキリした顔をしていた
なんだかんだと丸く収まり良かったとホッとした
コートをモップ掛けしていると大地に呼ばれる

「清水、及川アレもう届いてたよな?」

その意味を理解し2人そろってコクリと頷く部室に取りに行く

『試合、すごかったね』
「うん、これから楽しみね」

部室にあるダンボールの中身はきっとみんなが喜ぶであろうものだ
体育館へ戻り箱をあけ一年に渡す

『はい、月島と山口の分』
「…ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
『サイズ変更あったら言って』


もらってすぐに嬉しそうに着る日向と影山と袋から出していない月島に着てみろと迫るスガと田中にいわれ、結局4人ともジャージを着る
そわそわと背中を見せてくる日向に田中たちは似合っていると何度も頷く


「………………これから烏野バレー部としてよろしく!」


大地の一言に大きく返事をする日向たち
田中たちがわいわいとしていると隅で澤村が一息ついた

「…一応…一段落ついたな…スガも田中も及川もなんかいろいろやってくれたんだろ?」
「!えっ!?いや、別にっなにもっ!?」
『私はいつも通りマネージャーとしてサポートしただけだよ』
「とりあえず丸く収まってよかった…ありがとうな」

大地の一言にスガと潔子と目を合わせてポンと彼の肩に手をおいてお疲れというとすこし照れたようになんだ!?と言っていたが私たちはとりあえず笑っておいた
落ち着いたのも束の間体育館に大きな声が響く


「組めた!!組めたよーっ練習試合っ!!!相手は県ベスト4の青葉城西高校!!」
「青城!?」
『…マジですか…』


まだまだ波乱続きそうだった


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