小説3 | ナノ
▽ コート上の王様


そして早朝練が始まって3日目の木曜日
私達がくる前から早朝練は始まっていたみたいでスガと来てからすでに15分が経過しているが日向と影山のレシーブ練習は終わらず影山が出すボールに日向は必死に食らいついている
日向はぜぇぜぇ言いながらも初日に比べるとだいぶ上達している
私やスガ、遅れてきた田中はそれをただジッと見ていた
影山がもういいだろと言っても日向は打たれるボールを追いかけながらまだボールが落ちてないと言って食らいつく
それをみた影山は確実にそこに打ったら無理だろというような所にボールを上げてしまう
でもそれを追いかける日向

 恵まれた体格優れた身体能力そういうのとは別の武器。
「苦しい。もう止まってしまいたい」そう思った瞬間からの、一歩。
追いかけて追いかけてボールが落ちるまでがバレーボール。
転びながらもボールを返す日向に返ってきたボールをフワリとネットから少し離したトスを影山が上げた
それをみた日向は嬉しそうな顔をしてそのボールに向かって思い切りジャンプするそのジャンプ力に私は昔テレビでみた…私が烏野に興味を持ち出したきっかけのあの姿がちらついた
ひざを突きながらぜぇぜぇ言っている日向に影山は一言言った

「土曜日、勝つぞ」
「あたっ当たり前どぅぁォェェッ」

いきなり戻してしまった日向にスガが田中に水!と言っていた

「及川!!ちょ、ぞ、雑巾!!」
『……………』
「及川!?きーてるか!?」
『あ、え、あ、雑巾?ちょ、ちょっと待ってて!!』

さっきまでの光景が目に焼き付いてその場で固まってしまっていたみたいだった




××××××


『ふぁ〜あ』
「日菜子寝不足?」
『うぇ!?ま、まぁね!!』
「流れ球気をつけてね?」

深く理由は聞かずそのまま仕事を続ける潔子に感謝しつつ休憩で使うようのボトルを洗いに行きついでにドリンク作りをしに体育館を出る
その時すれ違ったのは色素の薄い髪をした長身の男とその後ろについていくこっちも結構身長が高い男
多分影山や日向たちと一緒に入部するはずの一年だった
前を歩く男と一瞬目があった気がするがそんなことは気にせずドリンク作りに向かった
ドリンクを作り終わり体育館に戻るとやはり先ほどの2人がいた
このあと練習はいつも通りに行われる
そしてついに土曜日になる…



土曜日になり影山日向のチームに田中、残り2人…月島と山口のチームには主将である大地が入る
月島の挑発に影山や日向がキレるのではなく先に田中がキレてしまい一発目の田中のスパイクはいつもよりパワーがあり月島のブロックを押しのけるように決まった
そして影山が日向にトスを上げ決めようとジャンプをするが今度は月島に完璧にブロックされてしまう


「″王様のトス″やればいいじゃん敵を置き去りにするトス!ついでに仲間も置き去りにしちゃうヤツね」


月島の挑発に乗るかのようにサーブ権を持った影山がボールを持ってエンドラインまでいく
ジャンプサーブで点を稼ごうと思ったみたいだが大地に簡単にレシーブされてしまう
そのサーブを見るとチラつくのは自分の片割れだった
そしてさらに挑発する月島にイラつく日向は王様のトスの意味を聞く
それは中学時代チームメイトからつけられたとても皮肉めいたあだ名。
あまりにも横暴すぎるトスに味方がついていけず最後はベンチに下げられてしまったみたいだった
その姿は容易に想像ができた
ひとりでいきすぎてしまう姿が前からも後ろからも天才に阻まれ切羽詰まっていた頃の片割れの姿と重なった
皆が黙って聞いている中日向がキョトンとした顔で言い放つ

「おれにはちゃんとトス上がるから別に関係ない」

日向もある意味横暴だよね…でも日向には影山が必要で影山も日向が必要なんだよね…きっと、
そんなときそれを聞いていた月島は少し雰囲気が変わった
試合は再開され影山たちにチャンスボールがくる影山は田中にトスを上げようとするがその時だった


「影山!!!居るぞ!!!」


そこにはいないと思っていた…ちゃんとそこには日向がいた



「お前何をイキナリ」
「でもちゃんと球来た!!!中学のことなんか知らねえ!!
おれにとってはどんなトスだってありがたぁ〜いトスなんだ!!おれはどこにだってとぶ!!どんな球だって打つ!!だから



おれにトス、持って来い!!!」



それは多分私達が全国へと向かう一歩を切り開く言葉だった。




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