[6. 接触]

デイダラに促され、開かれた扉の中へ入るとそこには既に先客が居た。
しかし、どれも自分が探している人物ではなかった。

「サソリの旦那はともかく、何で不死コンビまで居るんだよ!うん!!」

「うるせーぞデイダラ。急に叫ぶんじゃねーよ」

部屋に入るなり、少しの間を開けてデイダラが叫んだ。
その声に反応するように別の声の出どころを探せば、強面で低姿勢の男が一人。
そして、その反対側には、銀髪の男と頭巾を被っている男が座っていた。
じっとその様子を見ていたら、ふと、自分に視線が注がれている事に気付く。

「おいおい、デイダラちゃんよぉ!女連れとは良い度胸じゃねーか!ゲハハハ」

「デイダラ。てめぇ何考えてやがる?殺されてーのか?あぁ?」

「黙ってて欲しかったら金を出せ」

さっきデイダラに聞いた特徴と全く同じだ。
変な笑い方、超短気、金。
ここまで、特徴を言い当てられるのも虚しいが。
この様子を見れば仕方ないだろう。
何癖もありそうな感じの人達ばかりだ。

「オイラは名無しを起こしに行っただけだ、うん。このアジトに連れて来たのはオイラじゃなくて―」

「俺がこの女をここに連れて来た」

デイダラの声を遮る様に発せられた忘れる事の無い声。
自分達のすぐ後ろにあの男、イタチは立っていた。
その隣にはあの時一緒に居た大男も居る。

「おいイタチ、これは一体どういう事だ?」

低く威圧感を感じる声が耳に響いた。
その声の主は勿論、あの男だ。
言葉自体は短いのにやけに威圧感を感じる。
その声を聞いた瞬間、今は何も喋らない方が賢明だと頭が警告しているのが分かる。

関わらない方が良い。
瞬時にそう思った。

***

「…サソリ、お前は確か砂の国出身だったな」

「あ?」

そんな事まるで気にも止めていないのか、その男イタチは平然と話を続ける。
サソリと呼ばれた男はそんな見当違いな答えをするイタチに対し更に機嫌を悪くしていた。

(イタチは何が言いたいんだ?うん)

(んな事俺が知る訳ねーだろ)

イタチの真意が分からないのは皆同じだ。
一体何が言いたいのか。
しかし、そんな中でも何かに感付いたのか、サソリの視線が急に自分に向けられ身体が少しだけ縮こまる。

「この女と何か関係があるのか?」

「まだ俺の推測にしか過ぎなが…、もしかしたらこいつは木の葉から消えた一族の者かもしれない」

その言葉を聞き、考えるように黙り込むサソリの視線から逸らす事も出来ず、ただじっとその瞳を見つめる事しか出来なかった。
そして、皆の視線が再び自分に注がれる。

(消えた一族って言われても…)

そんなに見られても何も知らない以上、自分に答えられる事は何もない。
しかし、今の状況は自分が願っていたものだ。
上手くいけば自分の事について何か知る事が出来るかもしれないし、おばあちゃんが言っていた言葉の意味も分かるかもしれない。

「…木の葉から消えたと言ったな。そして砂とも関係のある一族。…まさか、苗字か?」

その一言に心臓が跳ねた。
イタチとその隣に居る大男、そしてデイダラには自分の名前は言っていた。
しかし、それ以外のここに居る人達には、まだ一言も自分の事については話していなかったから。
だから、どうしてサソリが自分の名前を言い当てたのか。
それが不思議で堪らなかった。

「その女の様子を見る限り名前はとりあえず当たりらしいな。だが、それだけじゃこの女があの一族だって証拠にならねーぞ。
なんせ当時の暗部や上忍達が調べても何の情報も出て来なかったんだからな」

「それは木の葉でも同じだ。鬼鮫、サソリ、角都。お前達なら今までに一度はその一族と戦ったまでとはいかずとも、見聞きした事ぐらいはあるだろう」

二人の話に付いていけない。
自分はこの世界の歴史、地名、そして様々な出来事を何も知らない。
イタチ達以外の二人は一体何がなんだか分からない様子だ。
そして少しの沈黙の中、最初に口を開いたのは鬼鮫と呼ばれたイタチと一緒に居た大男だった。

「そうですねぇ…。私は見た事はありませんが血継限界と秘術を扱う一族だと聞いた覚えがあります」

私が知っているのはそれぐらいです。
そう言った後に今度は頭巾の男、角都が口を開いた。

「後は口寄せの術の中でも最高位の幻獣系を使い、四神と陣遁という術を使う。秘術については俺も知らんが血継限界は己の血液を媒体にし、
様々な形態を使い戦う攻守共に優れた一族だ」

角都のその物言いはまるで実際に見て来た事を思い出すかの様な口ぶりだった。
そう話す角都に対しサソリも同様に頷く。
イタチはそれぞれの話をただ黙って聞いており何かを考えているようだった。

話を理解していない自分達は蚊帳の外。
幻獣系の口寄せって白虎の事なのかなと、暢気な事を考えていた矢先、鬼鮫が怖い顔で(普通の顔なのだろうが)こちらに勢い良く顔を向けた。

(怖っ…!)

「まさかイタチさん。あの時の口寄せがそうと?」

「あぁ…、その可能性はある」

百聞は一見にしかず。
あの時の口寄せをしてみろと言われた。
寝てチャクラは回復したはずだと言われたが、あまり良くは分からない。

(…そう言われてみれば、確かに身体の気だるさは取れたような気がする…。これがチャクラってやつ?)

この場の雰囲気を考えるとやらない訳にはいかない。
と言うよりも、まるで「やれ」と言われているような視線が痛い程に突き刺さる。
小さく溜息を付きながら瞳を閉じ、この世界に始めて来た時の事をゆっくりと思い出す。

『一般的に口寄せの術というのは本来は巻物を使い血の契りを行います。しかし、名無し様は元々その「血統」自体が契約となっているので、
巻物で契約せずとも最低限のチャクラさえあれば私を呼び出す事が可能です』

巻物、口寄せ、契約?
自分のさっぱり分かりませんという表情を察してか、白虎は微笑みながら「ただの口寄せに関する説明ですのでご安心下さい」と言ってくれたので助かった。
一通り教えてもらった後に試してみたが、その時は何度やっても出来なかった。

(あの時はチャクラって物が足りなかったから出来なかったんだ。でも今なら出来るかもしれない…)

瞳を閉じたまま、心を落ち着かせる。

「口寄せの術!」

そう言い、掌で地面を突いた瞬間、目の前にはまるで「良く出来ましたね」と優しそうな瞳を携えている白虎が佇んでいた。

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