[5. 状況把握]

目を開ければ、白い天井が見える。

ここはどこだろうか。
自分には身に覚えのない場所。
辺りを確認すべく身体を起こそうとした瞬間、腹部に軽い痛みを感じる。

「いっ、…っ」

腹部の痛みを感じながらもだんだんと今の状況を理解し始める。
恐らく自分はあの男に殴られ、気絶した後にここへ連れて来られたのだろう。

しかし何故?
見ず知らずの人に突然殴られるような程、恨みを買った覚えなんかない。
ましてや誘拐されるだなんて。
そんな事を考えていたら、あの男に対し沸々と怒りが込み上げてきた。

(ここに連れて来られたのも、あの時に聞かれた事と関係あるのかな…)

分からない事だけがどんどん増えていく。
分からないという事がこんなにも嫌な事だったなんて、今まで思いもしなかった。

イライラする。
自分で言うのも何だか、自分は短気ではない方だし、どちらかと言えば我慢強い方だと思う。
でも「今の状況」には我慢が出来ない程あまりにも分からない事が多過ぎる。
一番手っ取り早い方法は、本人に直接聞く事。
相手も自分の正体を知りたがっているし、自分だってもっと知りたい。
自分を知れば、おばあちゃんが何故この世界を自分に見せたかったのかが分かるかもしれない。

そうと決まればあの男を探しに行くのが先だ。
なんとか腹部の痛みを堪え、ゆっくりと少しずつ立ち上がれば扉が無遠慮に開かれ金髪の男が部屋に入って来た。

***

勢い良く扉を開ければ目の前には微妙な面持ちをした女が一人。
はっきり言えばこちらを嫌そうな顔で見ている。

(今度は誰…?)

(…初対面でこんな顔されたのは、サソリの旦那以来だな!うん)

部屋に入って来た男の瞳を黙ったままじっと見つめる。
相手も何を言う訳でもなく、同じ様にこちらをじっと見つめていた。
ここに来たという事は自分の様子を見に来たのだろうか。
もしかしたらこの男なら、自分を殴った男の居場所を知っているかもしれない。

「あなた、私を起こしに来たの?…それよりここはどこ?」

「ここはオイラ達のアジト。で、お前をここまで連れて来た男がイタチって奴だ。ちなみにオイラは芸術家で名前はデイダラだ。うん」

「…私は、苗字名無し。…ねぇ、そのイタチって人は何で私をこんな所に連れて来たの?」

こちらを警戒するように女が先に口を開いた。
流石に気絶している間にこんな場所に連れて来られれば誰だってそんな質問をしたくなる。

勿論、その質問の答えは知らないし、自分はただ頼まれて女の様子を見に来ただけだ。
しかし、折角起きたのならばこのままメンバーが待つ部屋に連れて行くのも良いかもしれない。
イタチが何を考えてこの女をアジトに連れて来たのかは分からないが、どちらにせよこのままこの部屋にずっと居る訳にもいかない。

***

「あ、そうだ。名無し。後でオイラの作った芸術作品見るかい?」

イタチに会うべく移動している途中、デイダラに突然話しかけられ少し驚いた。

急に名前を呼ばれて驚いたのではなく、何というか。
さっき初めて会ったというのにこうも打ち解けられたような顔を見せられると気が抜ける。
とりあえず、また今度ねと適当に返事をしておいた。

移動している途中、デイダラから色々な事を聞いた。
聞いたといっても世間話のようなものだが。
イタチはこんな奴だとか、その他のメンバーの話や特徴とかを色々と教えてくれた。
少し愚痴っぽい感じだったが。

「…デイダラもそんな人達に囲まれて大変だね」

素直にそう思った。
今の話を聞いている限りここに居る人達は一癖も二癖もありそうな人間ばかりだ。
正直言って会うのが嫌になって来る程に。
でも、会って話を聞かなければ状況は何も変わらない。

ならば覚悟を決めるしかない。
目的の場所に着いたのかデイダラがゆっくりと扉に手を掛ける。
開かれた扉の先には何が待っているのだろうか。
願わくば再び意識を失う事がないよう。

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