[7. 知る事]

名無しの口寄せによって現れた白い虎。

「白虎っ!良かった…、やっと会えた…。あんな所で一人にしないでよ…」

心底そう思っているのだろう。
名無しの安心したような顔を見て全員がそう思った。
それと同時に、口寄せならいつでも呼び出せたのではという疑問も浮かぶ。
しかし、そんな事はお構い無しに今までの出来事を話している名無し。

「…白虎と言ったな。お前にいくつか聞きたい事がある」

イタチの声が聞こえ、白虎共々そちらの方を向く。
何を聞くのかは勿論分かっている。

「こいつは苗字一族の者か?」

その質問に全員が白虎の答えを待つ。
私の世界での苗字とこの世界での苗字。
違うのならばそれはそれで問題は何もない。
しかし、もし同じであった場合、自分はどうしたら良いのか何も分からない。
そんな不安な気持ちを抱え白虎の言葉を待つ。
しかし、現実というものは時に上手く行かない。

「あなたが仰る通り、名無し様は苗字一族のお方です」

その言葉に自分は勿論、その場に居る全員が多少なれど驚きを隠せない様子だった。
今まで皆の話を聞いていても木の葉や砂とか何を言っているのか全然分からなかった。
そして、イタチが言った「消えた一族」という言葉の意味も分からない。

「…でも、私がその一族だからって何か関係があるの?私には分かんないよ」

「お前たちはあの森で一瞬の内に現れた。気配すら何も無かったあの場所にな。…お前たち一族は一体どこへ行き、どこから来た?」

自分の存在が分からないという事はこれ程までに不安なものなのか。
どこへ行き、どこから来た。
『あなたの目で見て、確かめて決めなさい』
イタチのその言葉を聞いた瞬間、何故だかおばあちゃんのあの言葉を思い出した。

「…ねぇ白虎、あなたは私達の一族に古くから仕えているっておばあちゃんは言ってた。私はこの世界の事は何も分からない。
でも…、何で私がここに居るのかって事はちゃんと知りたい。だから教えてほしい」

何かを知る事でこれからの自分が変わる。
例えそれがどんな事であれ、真実は変わらない。
自分の瞳を見つめていた白虎も少し何かを考えるようにゆっくりと瞳を閉じる。

「…名無し様、私が今からお話しする事は名無し様のご両親に関する事もお話しなければなりません。それは名無し様にとって簡単には信じる事が出来ない事かもしれません。…それでもお聞きになられますか?」

迷う事はない。
真実を知り、そこから進むか留まるか決めれば良い。
今の自分に必要な物は知識なのだから。

←prev next→
Topへ Mainへ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -