小説 | ナノ
言いたいことを言わせてもらえず、プクリとふくれっ面のままモネに案内してもらうトリシーとロー。
「……」
モネはトリシーについてもジョーカーから話を聞いていた。
彼のどこがそんなに魅力的なのか、彼女には分からなかった。
女の目で見ても外見は上々だとは思うが、それだけでローのみならず赤髪のシャンクスや白ひげを惹き付けはしない筈だ。
「…?なにか?」
「…いいえ、冷静沈着なイメージだったのだけど、存外子どもらしいのね」
「っふ、」
「あっ、ロー!ちょっと笑わないでよ!?」
ジッ…と己に刺さる視線が気になったのか、声をかけられるもモネは冷静に返す。
「ここよ」
案内された先は隣り合った二部屋だった為、ローは内心眉を顰めたが、モネがローの心情を読んだかのように先回りして彼の言葉を封じた。
「生憎、気難しい科学者ばかりがいた研究所だから一人部屋しかないの」
「……別に訊いちゃいねェが」
「あらそう?仲良しなのにごめんなさいね、うふふ……。
家具にはカバーがしてあるから埃は被っていないと思うけど、床とかは適当に掃除してちょうだい。
必要な物は後で届けさせるわ
あと、アイゼン・レコルトに関しては準備があるからまた後ほど連絡するわね」
何か困った事があれば部屋にある子電伝虫で連絡するよう告げ、二人に鍵を一つずつ渡すとモネは仕事があるからと言って戻って行った。
「……こっちに来るか?」
「私が怒ってるの、わかってる?」
「チッ、悪かったよ」
悪かったと思うなら、今から私のと交換してきて!!と言うトリシーの言葉を、聞きたくないといわんばかりにそそくさと部屋に入っていった。
「ああもう、ハァ…初っ端からキャスたちとの約束破っちゃったじゃない…
とりあえず片づけね」
溜息を吐いてから隣の部屋に入ったトリシーは、まず家具に掛けられている布を剥して回り、舞い上がった埃に咽ながらも何ヶ月か住む事になる部屋を見渡す。見付けた箒と塵取りで簡単に掃除を済ませると、以前使っていた科学者が置き去りにしたらしい本が大きな本棚に残されていた。
「…っ、ロー」
「……そろそろ落ち着いたか?」
興味がわいて本を手に取ろうとしたとき後ろから手が伸びてきた。
敵かと思い、殺気をもって振り返るとローであった。
「…実は喧嘩売ってるのかしら…?」
「冗談言うな、好き好んで喧嘩なんてしたくねえな。
おら、この部屋もスキャンするからこっちへ来い」
ローが借りた部屋からは何も出なかったが、万全を期しておかなければ気が済まないらしい。
仕方なく立ち上がって傍に来たトリシーをひとまず抱き締め、目で見ておかしな物が置かれていないかを一通り確認してからローは鬼哭を抜いた。
その結果、盗聴用電伝虫が一つ発見されてしまい、心底忌々しそうな顔をしたローが即始末した。
「……出る時は必ず鍵をかけろ。分かったな?」
「あいあいきゃぷてん……」
恐らく合鍵があるだろうから無意味かもしれないと二人とも分かっていたが、もし本当にシーザーがトリシーを盗聴しようとしていたなら、ローの能力の前ではすぐに暴かれてしまうと悟った筈だ。もしかしたら下っ端のうちの一人かもしれない。
荷物の整理も終わり、吹雪の音が遠く響く部屋の中、まだシーツも張られていないベッドでトリシーにキスをし、久々に可愛がろうとしたときに無粋なノック音が割り込んで来た。
「ッ!?」
「……チッ!一体誰だ……」
「シーツ!後で持って来させるってモネが言ってた!」
「…………」
慌ててローを押し退けようとするトリシーを押さえたまま、ローが暫く無言でドアを睨んでいると更に強くドアが叩かれた。
「いないのかー?科学者!!シーツを持って来た!!」
「いるわ!ちょっと待って!!」
「…例の件、もし聞けそうなら探りを入れておけ。何かあったら呼べ」
勝手に返事をしたトリシーに少し腹が立ったが、さっき怒らせた手前ここは大人しくしておくかと、ローは姿を消した。
その後、1時間ほど経ってトリシーがローの部屋を訪れる。先ほど邪魔された分も、しっかりトリシーを愛でまくった。
「それで?聞けたか?例の件…って、なんだそれ?」
「ん?食堂とかが載ってる見取り図。ローは貰わなかったの?」
シーツを持って来た男がくれたと言う、あれだけけん制したというのに、とローは頭が痛くなったような気がした。
「…………早速かよてめェ…」
「え?何が?」
ローの足の間にトリシーがいるような体制で座っていたが、見ている紙片を見咎めたローに後ろから取り上げられ、腰に腕を回されて更に引き寄せられた。
「俺は貰ってねェんだが……。」
「嫌われたんじゃないの?」
ケタケタと笑うトリシーをキスで酸欠にしてからもう一度聞く
「で?例の件聞けたか?」
「ぷはっ!ッハァッ…ちょ、なにすん、のよ…!」
「科学者様は弱ェなァ」
話させる気ないでしょ!?とキレるトリシー
「アイゼン・レコルトはこのあとロビーでモネと待ち合わせだって」
「ほう」
「私1人で行ってくるから」
「は?」
え?と返すトリシーにそんな足でダメに決まってんだろと言うと、別にその辺のやつらには負けないし大丈夫、とかふざけたことを抜かすので
「身体にわからせてやらねェと理解できねェのか?」
「エ゛ッ」
時間も迫ってると言うこともあって、脅せばスイマセンデシタと同行を許可した。
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