小説 | ナノ



「いいかトリシー、絶ッ対キャプテン守れよ!?」

「はぁ〜い」

「あとお前も死ぬなよ!?」

「はいはい」

「ほんとに聞いてんのか!?お前!」

「だってもう一週間くらいその話で耳タコだよ」





無事パンクハザードに着き、ローとペンギンは最終チェック中。
トリシーはキャスの話をペンギンにもらった武器セットを持ち、片足だけの代わりに剣で重心を支えながら聞いていた。




「でもいいなあ、そのコート」

「ね!私もそう思う!」

「あ〜まあな、でもベポは着れないだろ」

「太っていてすみません…」

「そのふっくらが可愛いじゃない!そのままでいて!」




新世界用にとローとお揃いでコートを新調したのだ。
黒のローに対し、トリシーは白。ローもトリシーもスリムなので、当然ベポにはきつい。



「そろそろ行くぞ」


「あ、キャプテン、ペンギン。最終調整終わったんスね。」


「あ〜、キャプテンさみしいよぉ」


さみしいとくっつくベボに、大丈夫だお前ならやれるとローがひと撫でする。




「じゃあ、頼んだぞお前たち」


「「「アイアイキャプテン!!」」」


これからの覚悟を胸に大きな声で叫んだクルー。対してローはうるせぇ、と笑った。





島の半分が氷、そして炎に包まれたパンクハザード。
警戒心丸出しでローとトリシーを出迎えたのはバルーンのような物で身体を浮かせた数人の男達で、その中には茶ひげも交じっていた。





「お前らは誰だ!?一体ここへ何しに来た!!」




ローは彼らがガスマスクをしていないのを見て大丈夫そうだと判断し、外してから岸へ跳び移った。
忽ち彼らがいきり立ったが、両手でバルーンの紐を掴んでいる彼らは武器らしい物は持っていなかった。




「……おれは七武海のトラファルガー・ローだ。
別に戦争仕掛けに来た訳じゃねェ。
ここの責任者に会わせろ」



「“トラファルガー・ロー” だと!?
最悪の世代のルーキーが何の用だ!!」



「……下っ端に話す気はねェよ。
おれが優しく言ってる間にさっさと取り次がねェか」




茶ひげが語気荒く問いかけてもローはどこ吹く風で、早くしろと更に彼らを急かした。



「本当に戦争しに来たんじゃねェんだな?」



「くどい。
こんな島に奪うもんなんざありゃあしねェだろうが」



「“マスター” の許可が出るまでは入らせねェからな」



ローの返答を聞き、漸く茶ひげが部下を中へ報せに向かわせた。



「マスターが会うそうだ。」



戻ってきた部下の返答を聞いて、茶ひげが案内する中施設内に入り、シーザー・クラウンと相まみえた。


「ようこそパンクハザードへ
トラファルガー・ロー。そしてエルリック・トリシー。」


「角生えてるし、羽生えてる」


「シュロロロロ…外見で判断しやがって失礼な女だ」



シーザーは横に羽の生えた女性を携え、出迎えた。
立場を弱くしろだのなんだの、シーザーがローに説くが長い話で非常にまだるっこしい。




「別に危害は与えねェ。どうすりゃ気が済む…」


「こうしようトラファルガー・ロー……!!
おれの大切な秘書モネの“心臓”をお前に預かって欲しい…。
いいな?モネ」



「!?」



「まじでか」



しびれを切らしたローがシーザーに問いかけると予想外の答えが返ってきた。
シーザーの提案はローにとても嫌な予感を抱かせるもので、もし代わりにトリシーの心臓を差し出せと言われてしまったら、ローにはとても呑めそうに無かった。
モネと呼ばれた女が暫く考えている様子だったので、嫌がれと願ったが、願いも虚しく彼女は承諾してしまう。




「…ええ、いいわよ。
でもマスター、そうなると彼からは科学者の心臓を預かるつもり?」



「んん?何だモネ、何か不満があるのか?」



「……?」


ローはなるべく動揺を顔に出さないようにしていたが、何を言い出すのか予測が付かず、組んだ腕に無意識に力が入っていく。




「“科学者”エルリック・トリシー、彼女は錬金術という不思議な術を扱い、別次元の世界から来たという話があるわ。尚且つ四皇赤髪のシャンクスや白ひげが攫ってまで手に入れたいと願ったとの話もある。
下手に手を出さない方がマスターの為だと思いますが…、」



「赤髪に白ひげだと!?」



「わあ。スゴイネダレノコトダロウ?」



「あなたのことよ」



「トリシー黙ってろ」


想像以上に自分のことを知られていて驚くトリシーにローが一言かぶせる。
不愉快な名前を出しやがってと思いながらも、モネの忠告はローの意図を叶えるものであり、不審に思う反面的外れな内容でも無い為ローは乗ってみる事にした。




「……随分詳しいじゃねェか。
皆、こいつを欲しがるが、いかんせん気分屋でな。こいつを理解した上で御せるのは俺以外いやしねェが、………シーザー・クラウン、お前も骨抜きにされたくなきゃあこいつには関わるな。」



「……そこまで言われると逆に興味が湧くが、まァいいだろう。
俺としても事を荒立てたくはねェ。
科学者の心臓は諦めよう……。そのかわりに…!!!
お前の“心臓”を俺によこせ!!!
それで契約成立だっ!!!」



「は!?いやそれなら代わりに私が…!!モゴッ!?」


仲間たちにローを守るように言われた手前、この状況はよくないとトリシーが前に出るがローに羽交い絞めにされてしまった。



「…………」

「互いに首根っこを掴み合ってりゃあ、お前は妙な気を起こせねェ。
科学者もよほどお前を気に入っているようで、俺も安心だ……!!
シュロロロロロ…」



自分の心臓も勿論大事に決まっているが、トリシーのものを差し出すよりは遥かにマシだと結論付けてローは承諾する。
例え一部分とはいえ、トリシーを他人に預けるような真似はローには出来ないからだ。
シーザーも正直トリシーの心臓も欲しいところであったが、危険性が未知数なトリシーを責めるのはよくないとローの心臓にしたのだ。



「あと一つ、聞きたいことがある
ここに"アイゼン・レコルト"という男はいるか?」


「"アイゼン・レコルト"だァ!?あの頑固ジジイに何の用だ?」


「いるみたいだな、ちょっと野暮用だ
後ででいい、案内してくれ」


「…まぁいい、俺も忙しいからな。モネそれもお前が案内してやれ」


はぁいマスター、とモネが返事すると話すことは終わったとばかりに背を向けようとするシザーに最後に、と会話を続ける。




「……初めに言っておくが、こいつに用がある時は必ず俺を通せ。」


「……分かったロー。お前の言う通りにしよう」


「理解してもらえて何よりだ。ならこっちも、さっきの件は早速明日から実行すると約束しよう」


「そうか!そりゃ助かる!!シュロロロ!
おれ達仲良くやっていけそうじゃねェか?」


「ああ、そうだな」


本音を隠したままローが頷くと、シーザーは如何にも二人を労うような態とらしい笑顔を浮かべ、空き部屋に案内してやるようモネに命じて部屋を出て行った。


「じゃあ案内するわ」

「ああ」





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