小説 | ナノ
神官であるイクスと別れ、ユンが旅の仲間に加わった。
ユンは医学の知識もあるし、植物の知識も豊富で美味しい食事も作れる。
正直食えればそれでいいという考えのあたし達が用意していた頃より、よっぽど体にいいものが食べられているし、姫様の肌艶も心なしか良くなってきていた。



そして神官イクスから告げられた通りに私達は四龍の血を継ぐ者たちを探すために、出発した。
どうやら国境と王都、戒帝国の近くにある里に四龍の1人がいるらしい。


そんな道中、突然姫様が剣を教えてほしいと言いだしたが、ハクとの痴話喧嘩+葛藤の末、どうやら弓を持たせ後衛にする事にしたようだ。


イル陛下も武器を持つことを良しとしなかった。故に、ハクやスウォンは仕方ないとしていたが姫様はもちろん武人のあたしにも会うたび止めろと言われた。
あたしもイル陛下の事は好きだが、敬意を払っているのはグンテ将軍だった為に、あたしは何度でも剣を握ったし、グンテ様も咎めなかった。


まぁそんな姫様だからこそ弓を渡した事は、ハクとしては苦渋の決断だったことが伺えた。


ダンッ!
ダンッ!


「…弓を渡された姫様は、寝る間も惜しんで毎夜弓の練習をしていた。」


しかし、


ダンッ!!


「…っは、」


あんな目をした姫様を見たことがあっただろうか。
あんな、燃えるような目をしたヨナを。
どうしてだろう、生きる為に仕方ないとして渡したはずの弓なのに、


もっと


もっと


足掻いて、生にしがみ付く姫様を
見ていたい、と興奮を覚えてしまうのは剣士の性なのだろうか



「……ハクも大変ね」



腕を組み、木にもたれかかりながら背後にある気配に声をかけると



「んだよ、気づいてたのか」



同じように姫様に目を向けるハクが現れる。



「大切なお姫様がどんどん先に行ってしまって寂しい?」


「は?なんだそりゃ、大体俺は…」



「ふふ、そうよね。だってあたしと同じ目をしてるもの。どんどん強くなる姫様に興奮を覚えるんでしょう?」


「…」


「まぁ、お守り頑張ってねハク様。
あとは任せるわ。」



あたしは念のため護衛として、毎晩こうして姫様を見守っている。


姫様に気づかれないように。






「様になってきたんじゃない?弓を引く姿勢」



「本当?」



「そうですね、飲み込みが早いと思います。」



「嬉しい!」


翌朝、朝食を用意しながらユンとユンシェがヨナの弓の構えを見て話す。



「…生半可な気持ちなら、武器は持たない方がいいよ」


「え?」



しかし、和やかな雰囲気の中、急に表情を重くしたユンは作業する手を止めないまま、静かに言葉を紡ぐ。










「人を殺すか殺さないかの話。護身用とか言ってるけど、俺らのような力の無い人間が戦場に放り込まれて情けなんてかけられる立場?俺らが生き残るには容赦なく急所を狙う一撃必殺の技か、卑劣な手段か、頭脳戦しかないってこと。スキを作ったり手加減したりなんて器用なマネは、あの雷獣さんだから出来る事なんだよ」



ユンの指摘は的を得ている。
厳しいことを言っているかもしれないが、今後の姫様のことを考えると今言うべきことかもしれないな。


朝食を取り終えると、また目的地までの山道を進んでいく。ユンの言葉が頭から離れず、何処か考え込んでいる様子のヨナを、ユンシェは見つめていた。そんな時、ヨナの目の前に一匹の猪の子供が現れる。



「…(可愛い。あの子が人であったとしても、戦場ならば矢を当てなければ…弓を引くということは、命を奪い、奪われること…)」



ヨナはキリキリと弦を引き絞り狙いを定め矢を放つも、その矢は猪を掠めただけで外れてしまう。
俯きながら外れた矢を拾うヨナの横を、一本の矢が過る。驚き顔を上げるヨナの目には、弓を構え先程自分が狙った猪を射抜くユンシェの姿が映った。


「姫様、惜しかったですね」



「…ユンシェは、凄いわね…あの距離から狙えるなんて…私は無駄に怪我をさせただけで、かえって残酷ね」



「まぁ、そりゃもう特訓しましたからね…」


「迷いがあるからですよ」


ヨナと話しながら、スウォンと弓の特訓をした日々を思い返していると、後ろから近づいて来たハクが口を挟む。


「ユンシェ、ユンと先に行け。俺は姫さんと話がある。」


「…泣かさないようにね。行こうかユン。」


「分かったけど、早く来てよね。もうすぐイクスの言ってた場所だから」



「…ああ」


意地悪するんだろうな…と思って泣かさないように言ったが、あれは泣いて帰ってきそうだなぁ。と思いながらユンと先に進んだ。



「そういやユンシェは女の子なのに、雷獣みたいに強いよね」



「あははっやだなぁ、女の子なんて歳じゃ無いし、一応これでも地の次期将軍予定で現王の専属護衛だったんだよ〜」


「ええ!?!将軍候補だったの!?専属護衛…!?え、ユンシェもお偉い身分だったりするの?」


「いんや、全然。
あたしもハクも孤児だからねえ」



そんな話をしながら進んでいると、霧が濃くなってくる。






ピタッ、


「それでさぁ…って、ユンシェ?」



「ユン、あたしから絶対離れないで」


「…え、な、なにかいるの?」



あたしの態度に怯え、ピッタリとくっつくユンを抱いて辺りを見回す。



「霧で見えないけど、結構な数に囲まれてる」


「ええ!ど、どうしよう…」



「大丈ー夫、ユンは絶対あたしが守るから」


安心しなさい。とポンポン背中を撫でれば、かぁっとユンの顔が赤くなり、ユンシェのタラシ…とボソッと呟かれた。



「侵入者よ、立ち去れ!!
さもなくば我らの怒りに触れよう!!」



「あんた達は白龍の里の人?」


「っ!お前達、何者だ!!
我らの一族を知っているとあれば生きて返すわけにはいかん!捕らえろ!!」



どうやら秘密の里なのは本当のようで、知っていると仄めかすと弓を構え始めた。



「わーーー!!ユンシェ!!どうするの!」



「おっふ、落ち着いてユン。
まぁ、とりあえず


捕まろっか」



「はーーー?!何言ってんの!?殺されるかも…!!」


絶叫してるユンを放置して、白龍の里の人に話しかける。



「抵抗はしないし、捕まるから攻撃はしないで。」



「……仕方ないわかった。傷つけないよう縛れ!」



カランっと持っていた武器を全て落とし、両手を上げると、そろそろと白龍の里の人達が近づき、宣告通り縛られる。

連行された後で檻のようなものに入れられた。



「俺たちは猛獣か!!なんで檻に入れられなきゃいけないのさーーー!!」



「白龍の里の人たちも動転してた、あたし達みたいな客が来るのは初めてなんだろうね。
目的は白龍だし、あのまま抵抗すれば勝てたかもしれないけど、ユンを守りながら戦えば手加減なんてできないからね、殺しちゃってたかもしれない。」



「!そうしたら、白龍がついてきてくれなくなる…ユンシェ、そこまで考えて…」



「かもね…ってこと。そのうちハクと姫様も来るだろうし、休めるときに休んでおきなよ〜」



そう言うと、ユンシェはゴロンと寝転がった。



「…ハク、あたしの鉄扇拾ってくれるかなぁ…」





あれからしばらく経ったがヨナ達が現れる気配はない。ユンシェは必ずくると言っていたが、本当に来てくれるのだろうか。
檻に入れられ、暇なせいかネガティブになっていく。
そんな中呑気に寝ているユンシェを見やる。



「ほんと、度胸座ってるよね…女のくせに…」


最後に綺麗な顔、と呟いて寝ているのをいいことに頬を撫でる。


ぱちっ。


「!!っぁ…!ご、ごめ…!!」



「きた」


「……え?」



撫でた瞬間ユンシェが目を覚まして、ぱっちりと開いた赤い瞳と目が合う。
驚いて回らない口で、触ったことに対して謝罪を述べようとしたが、どうやらユンシェが起きたのはオレのせいではなかったようだ。



「おい!!ユンシェはどこだ!?!」



「ハク、落ち着いて…!」


「これが落ち着いてられますか…!あいつはそうそうあの鉄扇を置いて行ったりしねえ!」


白龍の里の人の胸倉を掴み暴れる雷獣。
どうやらユンシェのことを探しているようだ。



「うわ…」


「ちょっと、あれどーすんの…」


「知らんぷりしたい」


「ユンシェのせいでしょ」


徐々にこちらに近づいてくるヨナ達を見て、ユンシェが一瞬、ピリッとした空気を纏った。



「!!ユンシェ!ユン!」


「やっと気づいたか〜」


ガシャン!と檻を押し倒す勢いで突進してきた雷獣は、ユンシェとオレの無事な姿を見て、へなへなと座り込む。



「おまっ…鉄扇落とすとか、」


「過保護すぎ。そっちも怪我ないみたいだね、よかった。」



「もう!ユンシェのばか!心配したんだからね!」




檻から出してもらい、ポカポカと叩かれるのを受け入れていると、辺りがざわつき始めた。



「赤い髪だ…」

「なんと美しい…!」

「ありがたや〜」




「えっなにこれ怖っ」


「何ここ。赤髪信仰か何か?」


ユンとユンシェの言葉に、老父が答える。




「我々にとって赤い髪は特別な思い入れがあるのですよ。

もしや貴女こそが、我々が待ち望んだ方かもしれない………違うかもしれない」


「…」


「違ったらどうするのさ。こんな秘境を知ったオレらは…」



先ほどまで静かに話を聞いていたユンが尋ねる。


「………………………………………

ともかく、白龍様にお会いになってください」




「長い。間が長いよ!!」


こうして、一抹の不安を抱きながらも、ヨナたち一行は、白龍と会うこととなった。









白龍へのお目通しを許されたあたし達は、白龍を呼びに行った老父が戻るまでの時間をつぶしていた。
里の人たちに騒がれるのを防ぐため、ヨナは外套で髪を隠すと、巨木の幹に背を預け、そっと腰を下ろす。
その横にユンシェとハクも腰を下ろす。



「ふぅ…」


ヨナは、緊張を解くかのように息を吐いた。



「姫様?どうかされました?」


「……途方もないわね」


「え?」


「白龍の力をもつ子が一族の中から生まれると、程なくして先代白龍の力は失われるんだって」


どこか遠くを見つめながら、ヨナは言葉を続けた。



「そうしていつの日か、また、龍の力が必要とされる時まで血を繋いでいかなきゃいけないのよね…」


「姫様…」


「そんな力を、私、借りに来たのね」


「……やめとく?」



少し意地の悪い笑みでそう聞くハクに、ヨナはふっと口角を上げた。
そして、ヨナはハクにずいっと寄ると、「剣貸して」と言ってハクの懐から短刀を抜き取った。


「!」

「!?」

「決めたことよ!後戻りなんてしない。でも、白龍がダメだったら、私をもっと鍛えてね!ハク!」



そう言って剣を振りかざすヨナを見て、ハクは心なしか嬉しそうな顔をしていた。
そんな2人を見てユンシェも思わずフッと笑顔になった。



そんな三人の背後近づく白い青年。


「そこの女!!」


「…!」



ユンシェは、ヨナに向けられた敵意を敏感に察知し、剣を抜くと、瞬時にヨナの前に立った。



「姫様!下がって!」


「ユンシェ!?」



突如戦闘体勢に入ったユンシェに驚き振り返るヨナ。
その拍子に、ヨナの頭部を覆う外套が脱げ、ヨナの赤い髪がはらりと空気を揺らす。

それを見た瞬間

ユンシェに剣を向けられた青年は、目を見開いて固まる。
青年の目はユンシェではなく、ユンシェの向こうにいるヨナをはっきりと捉えている。
攻撃を仕掛けてくるのかと思いきや、一向にこちらへと向かってこない青年に、ユンシェは首を傾げた。


「おい?」


「う…!」


「…!?」


青年は、突如右腕を抑え苦しみだす。
そんな様子を見たユンシェは、慌てて剣をしまうと、青年に手を伸ばす。



「ちょっと、あんた大丈夫?」


「うわあああああああああああ!!!」


「!?」


ユンシェが声をかけた瞬間、青年は身体の中の何かを爆発させたからような叫び声を上げた。
かと思うや否や、すぐに叫び声は止み、青年はその場にばたりと倒れた。




「えっなんだコイツ…大丈夫か?」


「何?さっきの叫び声」


「あ、ユン…ちょうどよかった!ちょっとこの人診てくれない?」



叫び声を聞きつけてやってきたユンに白い人の診察を任せる。
先ほどまで事態を傍観していたヨナも近くにしゃがみ、声をかけた。


「大丈夫?」


ヨナの声に呼応するように白龍の右手がシュウ…と音を立て熱を解放していく。



「おお…見ろ。白龍様の御手が…」



里の老父はその様子を、驚愕した表情で見ていた。
手の状態が落ち着くに伴い、白龍はゆっくりと目を開け、待ちわびていた者との再会を果たしたかのような表情でヨナを見つめる。



「あの…白…龍…?」


「…はい。私は古より受け継がれし、白き龍の血を継ぐ者…」



白龍はゆっくりと起き上り、ヨナにそう言うと、深々と頭を下げた。



「お待ちしておりました


我が主よ」



白龍の言葉と態度に合わせるように、里の者すべてがヨナに向かい頭を下げた。
視線の先にいる人物…ヨナが自分の待ちわびた相手であることの確信を得た白龍は、そっと顔を上げると、再びヨナを見つめた。



「我が主よ。よろしければお名前を…」


「…ヨナ」


「…ヨナ…様…」


「貴方…、綺麗ね」


「はっ…!とんでもありません!ヨナ様の方が神々しいお姿で」


「あらやだー!」


どうやら白龍はヨナのことを王…四龍を総べる緋龍王だと思っているらしい。



「私…あなたの王でも主でもないわよ。私は自分と仲間を守るために神の力を欲しがる不届き者」


「ちょ…黙っとこうよそういうことは…」



姫様の台詞を聞いてヒュゥ!と口笛を吹くとユンに睨まれた。ごめんって。
ヨナはそんな二人のやり取りに構わず言葉を続ける。


「他の三人の龍も手に入れようと旅をしているの。最初にあなたの力を借りたい。いいかしら?」


駆け引きも何もあったものではない。
何も包み隠すことなく話すヨナにユンは戸惑いを、ハクは愉快そうな笑みを見せた。




「光栄の極みにございます。


あなたが誰であろうと、どんな目的があろうと、私は、今からあなたの龍です。私の中の血が、そう告げているのです。」


白龍がヨナへの忠誠を誓うと、里の皆の歓声が上がった。







あれから、白龍が出発するための準備が着々と行われる中、ハクは武器調達しにいくと言って白龍のいる天幕へと向かった。
あたしはハクがいないのでとりあえず、姫様とユンの護衛をしていた。



「雷獣遅くない?」


「んー…嫌な予感がするなぁ…」


「嫌な予感て…?」



姫様達とそんな話をしていると、嫌な気配が近づいてくる。
ドスドスと音を立ててきたのは白龍とハクだった。



「姫さん。こいつはダメだ。他を当たろう」


「え?なに?どういうこと?」



どうやらケンカしたらしく、ユンが事情を聞くとお金はやるから帰れと言われたとのこと。



「で?そのお腹は?」


「メタボかな」



あたしが指摘しても、白龍にもらったであろうお金もすでに入れ悪びれる様子のないハク。
そのまま放置していると再度言い合いを始めた二人だったが、ここで黙っていたヨナが物申した。



「嫌っ!ハクは一緒じゃなきゃ嫌!!」



その言葉に、ユンシェと白龍は目を点にした。
そんな二人をよそに、ヨナはハクの腕をぎゅっと抱く。
ヨナの言葉と行動に喜びを隠しきれないハクは、「ふふふふふふふふふ」と不気味な声を出した。


「うわ、すっげー喜んでる」


「…姫様がそうおっしゃるなら…」



と、渋々といった様子の白龍。
ヨナは白龍にハクの懐にある金の入った袋を返すと言った。



「でもね、白龍も必要よ。だってこのままだとハクもユンシェも、私を守って、死んじゃうもの。」


「!!なるほど!!この者たちを私が!守れと!!」


「!!」


「ちょ、姫様っ!あたしは…!」


言い返そうとすると、強い瞳で制された。



「だから白龍は、二人が死なないように守ってほしいの」


「なるほど…!そういうことでしたか!姫様は勿論、この者たちは私が守ってやります!!」


「結構だ。白蛇ごときに守ってもらう程落ちちゃいねェんで」


「あたしだって」



そんな話をしていると、本日何度目か分からない言い合いを始めるハクと白龍。
付き合いきれないと、二人を置いて出発の準備を進めた。



「それで―――これからどこいこうか」



白龍という仲間を迎え、合わせて五人となったヨナたち一行は、白龍の里の人たちと別れを告げ、里を出た。
四龍の一角、白龍を手に入れたからには次の龍を探す必要がある。



「四龍をお探しですよね?

私、四龍の力を持つ者の気配、分かりますよ」


どこへいけばいいのか、と思っていたところにこの白龍の言葉だった。


「本当!?」


白龍によると、四龍は兄弟のようなものであり、遠く離れていても血で呼び合うとのことだった。


「わあっ!それすごい便利っ!」

「便…?」

「白蛇様。方向はどっちデスカ」

「白蛇ではない!」


「ハク、白龍いじめない…の…、」



悪戯心が炸裂し、ここぞとばかりに白龍に突っかかるハク。それに逐一反応する白龍。
キリがないと、ハクを注意しようとしたところ、異変に気付いた。





「ハク…白龍…」


「ユンシェ、どうしたの?」


「…ねえ、白龍。あんた名前は?
ハクと白龍じゃ名前被って呼びづらいし。」



「あ、そうよね!みんな白龍様って呼ぶけど、白龍って名前ではないわよね。私も、白龍のこと名前で呼んでも構わない?」


「名は…(父上と母上しか呼ばない名は…もう呼ぶ者はいないと思っていた…)」



名前に気付いて白龍に伝えると、みんなも気になると聞き始めた。



「キジャ…とお呼びください」


「キジャ、いい名前ね」


「キジャ、改めてよろしく〜!」


イェーイ!とキジャとハイタッチする。


パシッ


「え、なに?」


「ずっと、思っていたのだ…」



ハイタッチした手を取られて、そのままジッと見つめられる。


「ずっと、おもってた…?」


「えっ、キジャもしかして、ユンシェのこと…?!」


「…おい、白蛇いい加減手を…!」


キジャの言葉に姫様がキャーッ!と赤面し、ハクがキレ始めた。



「もしやそなたも、



龍ではないか?」



「……………は?」



あたしの手を掴んだままでジロジロと見続けるキジャ。
あたしが龍…?いやそんなバカな。


「イヤイヤイヤ、ないでしょ。大体龍だったとして、何龍よ?」


「私と初めて会った時もキジャみたいに倒れることはなかったし…」


「イクスもユンシェのことは何も言ってなかったよ?」


ないない、ありえない。と否定するとまだ納得がいかないのか更に近寄って見続けるキジャ。


「いや…でも、こう、気配が……」


「ハイハイ、違う龍探しに行きますよ〜」


ベリッとあたしとキジャを離して、そのままあたしを姫様の横に並べる。



「抵抗しろよ馬鹿」


「……は?」


ボソッと呟いてスタスタと進んでいくハクにピキッとする。
なんであたしが注意されないといけないのか。


「姫様に嫌われちゃえっ」


八つ当たりよろしく、ケッと吐き捨ててまた歩を進めた。


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