小説 | ナノ



「ハクー、何か見えた?」


「いーえ」



私達はムンドク爺ちゃんに神官を探せと助言を貰い、北山の方角へ来ていた。



「あのジジィ、どこに居るかもわからん奴を探せと言われてもな

人里離れた場所ってんで、ここに来てみたが」


ユホン様が神官を弾圧してからは、今は人里離れた場所でひっそりと暮らしてるらしい。



「まず人が住めそうにないわね」


「まぁ、姫様には無理でしょうね」


「俺らはまぁ、住めなくはないけどな」


「え?だって…こんな寒い山で!?」


「火の部族の支配する北はもっと痩せた土地だ。どこからの干渉のないこういう場所の方が、案外住みやすいかもしれないな」


そう考えると火の部族の民は、1番恨み辛みを持ってそうだ。
あそこの…なんだっけ、テジュンとかいうのがもう少し痛みをわかる子だったら、よかったんだけどなぁ


「ところで姫さん、ついてきたのは良いですが、また野宿暮らしになりますよ」


「大丈夫よ、少しは慣れたわ」


「北の山は今までよりもっと寒いですよ?」


「大丈夫、ハクとユンシェに包まって寝るから」



「!?姫様、私は構いませんが
……そんなことしたらハクが我慢出来ないんじゃ…んん!!」


ハクに思い切り口を塞がれ、崖に押し付けられた。今ダンッていった、ダンッて。
手加減しなかったなこのクソ雷獣。



「がまん?」


キョトンとしてる姫様は、私が言った意味などわかっていないようだ。ハクも苦労するなぁ


「お前、ほんと黙ってろ…」



「んんんー(早く離せこのクソエロ雷獣)」



ハクに押し付けられた崖から微かに音が聞こえてきた。思わず目で合図すると、そういうのにはやはり敏感なようで、すぐに手を離してくれた。


「ぷはっ、追手だ、50は居るね……めんどくさ」


「そんなに……」


「(ちっ、クソ一々エロいんだよ)
なに?もう追う気はねぇのかと思ってたが、……こりゃまた気合いの入った数だな」


そんな事を話していると、ザザッと現れた追手に囲まれた。



「ハク、姫様から離れないでね」


「お前こそな」



武器である、愛用の鉄扇を棍棒に組み替え、姫様を囲んで護る。



「「「ウオオオオオオオ!」」」



襲いかかってくる兵を薙ぎ払っていく。



「やっぱりあんたらか、火の部族」


「雷獣と舞龍は健在だな。ソン・ハク将軍、イ・ユンシェ次期将軍……そして、ヨナ姫様」



カン・テジュン。
火の部族長、カン・スジン将軍の次男。
彼は以前からヨナ姫様に惚れている、

……はずなんだけど、何故だろうやはり熱過ぎる視線を感じる




「相変わらず戦う姿も美しいね、ユンシェ」



「お褒めに預かりこーえいでーす」


「どうだい?ハクさえ渡してくれれば、君は助けてあげよう。」


「えっ、テジュン様ってもしかしてソッチの…?」


「「んなわけあるかっ!!!」」


「ですよね」


ハクさえ渡してくれればとか言うからてっきりソッチだと思ってしまった。


「ハクと姫様さえ渡せば君の称号を戻してあげるって言ってるんだよっ!」


「称号?」


「地の次期将軍の称号さ!」


「あっは」


ほんとにバカヤローだな


「いらないよ、ばぁーか」


「!テジュン様!」



ヒュンッと風牙でたんまり買った暗器を投げ付けると、側にいた護衛に弾かれてしまった。
なんていったけ、フクチだったかな


「!」


そんな事を考えていると、やり返してきたのか、弓が降ってくる。







「ハク、姫様持てる?」


「姫さんは荷物かよ……っは、余裕!」


「とりあえず姫様を安全な場所に!後衛する!」



私はハクと姫様が走る後ろから降る矢を弾いて行き、兵も叩きつける。



「あっ、」



「!(あれには確かさっき毒が…!)ヨナ!!!」



そんな中、姫様が躓き、転んだところに矢が飛んで行く


ドッッ!



「馬鹿っ、ユンシェ!」

「ユンシェ!」


「……っ、大丈夫大丈夫、」



ハクと姫様が心配そうにあたしに寄る。



「姫様、ハク!こっち!」


「おう!」


ズルリと矢を抜いて、姫様とハクの手を引き木の茂ったところに入る。



「ふー、よし姫様はここを動かないで下さいね」


「だめよユンシェ!殺されてしまうわ!」


「ユンシェ、やめとけ!毒矢だったろさっきの!耐性あっても動いたら…!」


「だからって、あの数をハク1人では行かせられない!」


私を止める2人の手を掴んで、だから2人で片付けて来るんで、絶対出ちゃダメですよ!と言った。



ガッ!


「うわぁっ!」

「チッ、相手は一人の女だぞ!何をやっている!」

「さすがは高華一の舞龍……!」

「素早くて、目に止まりません!」


「絶対に、通さない…!!」


しかしさすがの私も毒がこれ程回った状態での戦闘はキツかったようだ。
ふらっ、と眩暈を起こした隙を狙われ振り下ろされる剣。






キィン!!!


「ユンシェ!」



「ハク、」



「無理すんな!毒が回んだろ!!」


「いやもう大分回ってると思うけどね……」



ハクが代わりに受け止めてくれたが、立て直す隙も与えず次々とかかってくる兵士たち。
しかしそこへ赤い見慣れた髪が視界に映る。




「!?姫様…!?」



「馬鹿野郎……っ、何で出て来た!!!」



「…!ハク!!危ない!!」


ガツン!!



姫様が出て来た事によって、ハクが気が逸れ、その隙を狙われ剣で吹き飛ばされた。武器の大刀は崖下へと落ち、ハク本人も、崖っぷちに掴まっているのがやっとの状態となってしまった。



「っくそ!!」



「よせ、お前じゃ無理だ……!」



「黙ってろ!!こんなところで、終わるわけにいかない!!」


ハクの元へ行って、引き上げようとするがそこはさすがの私も大の男を引き上げる力はなく、一向に持ち上がる気配がない。

こうしてる間、姫様がテジュンに捕まってしまった。



「姫様っ!!」


「あっ!?」


「いけませんよ、姫。彼奴らのところへ行こうなど……

あなたは私と共に城へ戻るのだ!!」



テジュンに髪を鷲掴みにされた姫様は、見たこともないような燃えるような瞳を見せて、剣で己の髪を切り払った。




「ひ、めさま…?(あんな燃えるような瞳をした姫様、初めて見る…)」



「ハク!ユンシェ!」








姫様が髪を切り、私達の所へきて一緒にハクを引き上げようとする。



「何をしている!ハクとユンシェから姫を離せ!」



「てめぇら!!!それ以上近づいてみろ…殺してやる…!!」



「ヒィイ…!!」



テジュンの声に、私達を離そうとした兵を殺気と怒気で押し留める。

しかし、兵に気を取られ
ズッ、とハクの手が滑り落ちそうになり慌てて抑える。



「ユンシェっ、姫さん…!やめろ、手を離せ!!」



「離すわけないでしょ…!!」



「っきゃ、!」


「わ!?」



私と姫様ではやはり耐えきれず、姫様のマントを掴もうとしたテジュンも間に合わず、私達3人は谷底へと落ちた。
っくそ、やっぱり相当深い、この谷…



「ハク!手荷物、姫様以外全部捨てて!!」



「は!?おまっこの非常時に何言って…」


「早く!!」


「ッわかったよ!!」



この勢いで地に叩きつけられたら、ハクでさえどうなるかわからない。
身を軽くさせ、姫様をしっかりとハクに括り付ける。
なにかに使えないかと、持っていた大きめの布でハクと姫様を巻いて木に括り付け、緩衝材にするつもりだ。



「っおい、お前はどうする気だよ!!」



「どうにかなるっしょ、ほら受身の準備して!」


「っち!!」



ザザザザザッ!!
ガッ!!




ドッ!!!



「う…」



ちくしょう、思いっきり打ち付けた…
いってぇ、
上を見れば白い布が木に引っかかってるのが見えた。


「…よか、った」



それだけ呟いて、私の意識はブラックアウトした。






暗くなった意識の中でもまだ私達はテジュンに追われていた。
途中、姫様がテジュンに捕まる。
そして、ハクも捕まり、テジュンはハクを捕まえた兵に首を切れと命じた。


[ハクッ…!!嫌ぁ!!]



姫様の悲鳴が聞こえ、ハクの首元の剣が鈍く光る。



[やめろっ…!!!…!?」



「ちょっ…と…!?」


兵を羽交い締めにすると、急に視界が明るくなり、兵は美少年へと変わっていた。



「え?…なに?…」



「ユンシェっっ!!!」


「ひ、めさま…!ご無事で…!!」



状況を飲み込めずにいると、戸が開き薪を持った姫様が映る。
抱きつかれ抱き返そうとすると、美少年に布団へと押し戻された。



「動かないで。あんたが一番酷い怪我してたんだから。身体の毒は抜いたけど、落ちた時の傷が深い。
あ、俺はユン。気にしないで、ただの通りすがりの美少年だから」



「…そうか、姫様を助けてくれて感謝する。ありがとう、ユン。」



「ちょ、だからまだ動いちゃダメだってば…!」


ユンに向かって頭を下げれば、またまた布団へと押し戻される。


「…目の前に倒れてる人が居たから放って置けなかっただけだよ。別に、大したことしてない」



「……そうか」




すると、ガラリと戸が開き入ってきたのはハクだった。






「!起きたのか、全く無茶しやがって…!」


「あはは…」


「あの時捨てた荷物やっと全部見つかったぜ」


ほらよ、助かった。と差し出されたのはあの時2人を包んだ布だった。
よかった、護れたんだ。と実感してるときだった。



「…目を覚まされたんですね、ユンシェさん!」


「ん?だれ?」


なんだかほんわかした金髪の男性が、入ってくる。


「ユンシェ、この人は神官様なの」




「は!?神官!?こんな谷底に……神官とユンが一緒に住んでるの?」



「そうだよ」


神官は人の過去や未来も見えるという。神官を追い出したユホン様を、その嫡男に仕えていた私を、どう思うのだろうか…



「そう思い詰めずとも大丈夫ですよユンシェさん、私は恨んでなどいませんから」



「っしかしですね、」


「貴女が気に病んでいることもわかっていますが、本当に大丈夫なのです。さぁ、ユンシェさんも起きられた事ですし、これからの話をしましょう。」



謝罪しようとしたが結局、神官に丸め込まれてしまった。


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