小説 | ナノ


あっという間に日が暮れた。
足早に馬を狩り、テヨンの薬を買ってきたヘンデが帰って来た。
おかげでテヨンの発作は治まり、テヨンは眠った。


「ヘンデ、大丈夫?」


「なに、これくらいでくたばるヘンデではありませぬ〜」


そう言いながらもフラフラするヘンデに、お疲れ様。と頭を撫でた。


「ユンシェ様、此処を出るつもりなの?」



「うーん、そうだね…このままだとまずいしね」



ハクが、ムンドク爺ちゃんに承認の件を話しに行った。でもきっとそれだけではない、城から追放された身だ。
将軍を降り、ソンの名を捨て此処を出るつもりだろう。
姫様をどうするつもりなのか…まぁおそらく置いていくつもりだろうが…


「……はたしてそう上手くいくかね…」



そう言いながら、出立の準備を始めた。



明朝―――――――



「あ、そろそろかなって思ってたよ」


「なんでいるんだよ…(汗」


風牙の都を出るのに通る道で待ち伏せしていたら、やはり大きな荷物を持ってやってきたハク。


「……やっぱり、姫様は置いていくの?」


「…ん、ああそっちのがいいだろ。やっと慣れてきたみてぇだし、此処なら安全だ。」


「ふうん、そう上手くいくかな?」


「あ?大体、お前も出る気か?」


「まぁ、そりゃね。私だって次期将軍の称号剥奪だろうし?」


きっと私とハクが犯人扱いとなる。
そうなればハクだけでなく私も、イの名を捨てなければならないだろう。


「…いいのか?グンテ将軍」


「今更聞く?」


なんだかちょっと気まずそうに聞いてくるハクに、クスリと笑う。


「いいのよ、あの人には私の他にもいっぱい大切にしてくれる人がいるから」


「ふーん」


「で?」


「あ?」


「私についてきてほしいんじゃないの?」


男の1人旅は寂しかろ?とニヤニヤ笑ってやれば、なんとも言えないような顔をするハク。





「元の地の次期将軍様だよ?欲しくない?いらない?今ならタダだよ?」


「……お前な、」


ほれほれ、と手を伸ばすとその手を掴んで抱き込まれた。


「…が、…しい」


「え?なに?聞こえなーい」


「てめえについてきてくれって言ってんだよ!!」


「わ!?」


耳元ででかい声を出されキーンとなったものの、ちゃんと言ってくれたので了承する。



「はいはーい、公共の場でイチャイチャしないでくださーい」


「イチャ…!?!」


「あら、テウおはよ〜!」


血は繋がってないはずなのに、ハクと何処と無く似ているその顔を撫で繰りまわす。












「ハク様とユンシェ様はどちらへ?」


「俺らここを出るわ」


「へー、行ってらっさい………

………って、マジで?」


「つーことで次期、風の部族長はお前な」


「やだよめんどくさい!……の前に色々あるけど、リナさん置いてくの!?」


あ、そうか此処ではヨナ姫様は見習い女官のリナとなってる。


「あいつもまとめて、よろしく頼むわ」


「ワケありのお姫様なんて、荷が重いっすよ」


「え、テウ。気付いてたの…!?」


その時、聞き慣れたあの明るい声が聞こえた。



「ハクー!!ユンシェ!」


「あー…姫様、」


「私もここを出る!一緒に来なさい!」



「……何だって?」


「ここを出るの。ここに居たら、風牙の都を争いに巻き込んでしまう。」


姫様なりに、考えたんだろうな。
そう思いながら、傍観のためテウの側へいく。



「……お帰りください、姫さん。
長老にはもうその旨を伝えてある。もうここは大丈夫だ。あんたはここでのんびりと暮らせ。」


「ハク、行くのを許した覚えはないわ」


「……許すもなにも、俺達はもうあんたの従者じゃない。これから自由な旅に出ようってのに、あんたの面倒まで見る義理はねぇな。
ここならスウォンも手出しはしないから、静かに暮らせ……」


「もう決めたの。」


心を鬼にして言い放つ、ハクの前に立ちはだかる姫様。
さて、どちらが負けるか


「……どいて下さい
どう思おうが、俺はあんたを連れてかない」


「………」


「じゃあ金は?金はあるのか?一緒に行くのなら、どうしたって俺らはあんたを守らなければならない。今のあんたに、俺らの働きに見合う金が払えるのかって聞いてんだよ


………あぁ、それとも、身体で払うか?」



おっと遂に本音が出ましたハク元将軍ーーー!!



「あげれるものはなにもないわ」


「物分りがいいじゃねぇか。さぁ戻れ、行くぞユンシェ。」



「それでも」


尚も引き止める。


「それでも!!お前達が欲しいもの!!!
私に、ハクとユンシェをちょうだい……!!!」


これはハクの負けかな。


「ふふっ」


「ユンシェ、笑ってんじゃねーぞ。あー、くそ、ムカつく。なんだそりゃ……これだから…」


お前傍観しやがってと小突かれた。



「あんたの勝ちです、姫様」


「ま、こうなるんじゃないかなーとはおもってた。」



「ユンシェ……ハク…」



こうしてまた私達3人は旅に出ることになった。





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