小説 | ナノ


風牙の都着くと、門番であるはずの、テウとヘンデが居眠りをしていた。
相変わらずの緩さだな〜と眺めていると、容赦なくドガッ!と二人に蹴りを入れるハク。


「なになにっ?!」

「イタイ!」


「見張りはお昼寝の時間か、この部族は」


「「ハク様っ?」」


「あ、ユンシェ様も居る!」


「久しぶりだね、テウ、ヘンデ。背が伸びたかな?」


「我らは風の部族〜」

「風の赴くまま逆らわずに生きるのであります〜」


と、ヒラヒラ踊り出すテウとヘンデ。



「………誰だこんな奴ら見張り番にしたの」


「で、ハク様、ユンシェ様、どうしたの?」


「久しぶり〜10年ぶり?」


「将軍クビになったの?明日があるさ」


と立て続けに聞いてくるテウとヘンデ。それに更に続くように


「長〜!」

「ハク様ー!!!」

「若長ー!」

「久しぶり!あら、ユンシェ様も居る!」

「きゃー、久しぶり!!」


と、風の部族の皆がやって来る。
私やハクが話す間も与えない程、あっという間に人が集まり、賑やかになった。



「あら、誰だい?この子」

「ハク様の女?」

「えーっ!?」


と、ヨナ姫様を見るなり食い付きが激しい風の部族の女子たち。




「相変わらずモテモテですね、ハク将軍」


「バカ、その呼び方やめろっつったろ。
それより、ユンシェ、ここでは姫さんは城の女官見習いということにするからな。」


「!なるほど、了解しました。若長〜」


それもやめろ。と言われた瞬間、ドサッと後ろから音がした。



「あらっ!」

「倒れちまったよ」

「弱っちい女だなぁ」


「ひっ…!!んん、」


思わず、姫様!と呼びそうになった口を塞ぐ。
そうこうしている間に、すかさずハクが姫様を抱え、寝床へ運んでいった。



「ユンシェ様、ハク様とはどうですか〜?」


「ん?何が?」


「えっあれ?毎日一緒だったんじゃないんですか?」


「ううん、私スウォン…様の専属護衛してたからハクと会ったのもこの前が5年ぶりくらいよ」


おお、姫様の事となると相変わらずの素早さだな。なんて思っているとテウが話しかけてきたから、可愛くてつい頭を撫でる。
しかしそう言えば、テウの口がヒクついた。



「(ハク様…お気の毒に…)」


「ところで、ヘンデ。ムンドク爺ちゃんは?」


「長老なら緋龍城ですよ」


「えっ?」


布団の準備から帰ってきたヘンデにそう問うと、意外な場所の名があがる。



「やっぱり知らないんですね?急に城から五部族招集が下ったんですよ〜」


「五部族招集!?」


「普通だったら、城にいるハク様が出れば良いのにでも、既に将軍を退いた長老が呼ばれたから変だと思ったんです。ユンシェ様、やっぱりハク様はクビなんです?」



笑いながらそう言うヘンデに私は苦笑しか出来なかった。
五部族からの承認を経て王位を継承し、正式に高華国の王になるつもりなのか…


「ん?っていうか!ユンシェ様も怪我してんじゃん!!」


「ああ、私のは別にそんな大層な…」


「ダメダメ!蔑ろにしたらハク様に殺されちゃいます!」


私の蛇に噛まれた足を見てそう言うヘンデとテウ。
すぐさまテウに横抱きにされ、ハク達のいる所へと連れて行かれた。







「ハク様ーー!!」


「あん?あ、ヘンデ布団の準備ありがとな助かっ……ユンシェ!?」


「あはは、」


「ユンシェ様怪我してるじゃないですか!ハク様ー!寝かせてあげないと!」


「あ!?あぁ、なんだその足の事か」


たかだか蛇に噛まれたくらいで床に伏さなくても、死んだりしないよと言えば、そうだなとハクに返される。



「大体お前らは大袈裟すぎんだよ、ほら寄越せ」


「えっ?あ、」


「ヒューヒュー!ハク様イケメーン!」


「じゃ、俺らはこれで!」


テウの手からハクの手に私が移ると、2人は大袈裟に騒ぎながら、部屋から出て行った。


「…悪かったな、置いてって」


「え?いや、別に…テウ達とも久々に話せたしね」


「そうか…」



その後
姫様が目を覚まし、食事も召し上がったと報告を受けたので姫様はハクに任せ、風の部族の洗濯を手伝おうと、女子たちと川に来た。



「良かった……!!ご無事だったか。良かった!!
信じたくなかったが、陛下が亡くなられてハクとユンシェと貴方が城を出たということは、やはりそういうことなのか……
その時お守りできず、口惜しい………」


「ムンドク爺ちゃん……」


「ユンシェ、よくここまで来てくれたな。怪我はないか?」


「まぁそんな擦り傷程度だよ。」


「そうか、よかった。おっ、ハク。」


「オマケみたいに言うな」


ムンドク爺ちゃんは、本当のお爺ちゃんのように私達を可愛がってくれる人だ。
ムンドク爺ちゃんが居るから、風の部族の人達はこんなにも暖かいんだよね。




「ヘンデ!お前どうしたその怪我……!」


「あれ、長老が居る。おかえり〜」



怪我を負ってヘンデが帰って来た。


「ヘンデ!?どうしたの!?」


「ユンシェ様、ごめんなさい〜。ちょっと失敗しちゃった〜
上流に行ったらびっくり、火の部族の奴らが川を塞き止めてたのさ」



ヘンデの言葉を聞き、確信に変わる。



「なにそれ新たなイジメ?と思って思わず武装した奴らにケンカ売っちゃって、そしたらボコボコ、このザマよ」


「ごめん、やっぱり私が行っていれば…」


「ユンシェ様、気にしない気にしない〜」



火の部族が風の部族へ嫌がらせ?
そんな可愛い物じゃない、これは確実に…



「(脅迫だ…)
ねぇムンドク爺ちゃん、今日の五部族会議って、スウォン…様の新王即位の件についてだったんじゃない?
それで、姫様やハクのことを思ってムンドク爺ちゃんだけ承認しなかった、違うかな?」


「む……その通りだ」



やっぱり…
そうなると承認しない限りエスカレートする可能性がある、でも…






「……元々空と火の部族には癒着がある。川が枯れてるのは火の部族からの、承認しないと大変なことになるぞという警告だろうね。
でも部族同士で争うわけには行かないし、今争ったところで風の部族の敗けは目に見えてる」


「じゃあ、どうすれば………!」


「………とりあえず様子を見るしかないね、ハク」


「あぁ、そうだな…皆落ち着け!
川が枯れたくらいでくだばる俺らじゃねえ!ここには商団が来る。とりあえずそれを待とう」



そう、商団から水を買えば、何とか繋げられる。
でも、私の勘が正しければ…

そうなると、もうムンドク爺ちゃんに承認してもらうほか、なくなる。
そう考えていると、



「ハク様!テヨンが……!」


「!!」


あろうことか、このタイミングでテヨンの発作が起きてしまった、薬と水が緊急に必要だ。


「大変だ!」

「商団が、ここへ来る途中何者かに襲われた!!」


「な、!?」


やはり、そうきたか
このままではまずい



「………ハク、これはもうスウォンの新王即位の承認をムンドク爺ちゃんにしてもらうしかないよ…」



「……ああ…」




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