小説 | ナノ
「おはよう」
「おはよう、早いね焦凍くん」
朝、家から出るとすでに玄関前に轟がスタンバイしていた。
ピンポン押してくれたら家に上げるのに。と言うと、それは無理じゃないか?と私の後ろで歯を食いしばる父を指さした。
「親父さん、相変わらずだな」
「そうだねえ、そういえば焦凍くんいっぱい指名来てたけど、どこ行くの?」
駅まで歩きながら、指名のことについて話す。
轟が親父のとこ。と、ボソリと呟いたものの、私たちの中では大きな変化だった。
「わ…、マジで?覚悟決めたの?」
「ちげえ。美鳥の言葉を聞いて、緑谷の叫びを聞いて、ようやく目が覚めた気がしたんだ。前に言ってただろ?」
親父を利用しに行くんだ。そう言って少し笑った焦凍くんは、ちょっと大人びて見えた。
大きな一歩を踏み出した彼に、自分も頑張らねばとキュッと手に力を入れる。
「お前も親父のところだろ?」
「君も相変わらずブレないね!?」
電車に乗るとさも当たり前のように、同じとこだろ?と言ってくる轟に、違うよ!?と返す。
「なんでだ…!?同じ炎だろ…!?」
「いやまあそうだけど。幼いころから散々、エンデヴァーさんには鍛えてもらったし、せっかくこういう機会だから別のヒーローも気になるじゃん。いっぱい指名も来てることだし。」
「クソ親父め…」
「もしかして私で釣られたの!?」
エンデヴァーに私が来るから来いと釣られたのかと思ったが、あわよくばくらいだったようだ。よかった。
(ちなみに、エンデヴァーさんは本気で私が来ると思っていたらしい)
「じゃあ、どこ行くんだ?」
「ん〜まだ迷ってるところだけど、ホークスかなあ…」
昨日のこともあるので、美鳥を角に立たせしっかりと轟がガードする。
ホークスのところにしようかと言った途端、男のところじゃねえかと項垂れた。
どうにかしてくれこの甘ちゃん末っ子。
「いやヒーローの男女比考えて!?」
「女性ヒーローもいるじゃねえか」
「だから学びたい部分が違うんだってば」
そんな言い争いをしながら電車を降りて、学校へと再度歩き出した。
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