小説 | ナノ
ピカッ!
ッヒュ、ドドド!!!
「うわっと!相変わらずの常人離れよね!!」
「ちょろちょろと、よく避けるねェ〜!」
キャスがトリシーを迎えに走っているとき、トリシーは黄猿の攻撃を避け続けながら脱出の隙を狙っていた。
「まだ、出さないのかい?“レンキンジュツ”」
「!!あ〜、そうよね。エンヴィーかしら?」
黄猿が“錬金術”を知っていることに驚き、一瞬固まるが向こうにアイツがいたことを思い出して納得する。
「彼も珍妙な子だよねェ。君のことはいろいろ聞いているよォ〜
弟くんは無事だったのかい?」
「ほんっと、どいつもこいつもお喋りね!!!」
私について、エンヴィーに聞いているなら錬金術を出し惜しみする必要もない、と両手を合わせ術を発動していく。
パンッ、
ドオン!!
「おまっ〜〜〜!トリシー〜!!キャプテンに禁止って言われてただろうが!」
「キャス!?だってエンヴィーのせいで知れ渡ってるんだもの、もういいでしょ」
「ハート海賊団〜!逃がさないよォ」
ちょうど錬成したときに、キャスがトリシーのもとにつき錬成を見て咎めるが黄猿が攻撃を仕掛けたことで、すぐに立て直し逃走を図る。
「ヒエーー!!黄猿〜!!」
「キャス何しにきたの!」
「お前を迎えに来たんだよ!!」
「やらせねェ、よい!!」
ガキンッ!
「マルコさん!」
「“不死鳥”マルコ…!!」
黄猿が仕掛けた攻撃を不意に現れたマルコが防ぎ、そう簡単にうちの妹はやらせねェよい。と呟いた。
それを聞いたキャスが、いつの間に白ひげの娘になったの!!?と叫ぶ。
「親父が気に入ってな。赤髪も気に入ってるからな、トリシー・エルリックに手ェ出すと白ひげと赤髪が動くよい。」
「それは大変だねェ〜、さっさと殺しておくに限る〜!」
キュイーン!と準備し始めた黄猿を見て、マルコは早く逃げるよい!!と叫びながら、助太刀に入った。
そんなマルコさんを後ろ目に、ありがとう!と叫んで潜水艦までの道を走る。
《取り消せよ…!今の言葉…!!》
キャスと言い合いしながら逃げていると、またあの感覚が走る。
「ッ!?エース…!?」
「トリシー!?どうした…?」
ピリついた空気、戦場の匂い、すべてがあの時と変わらない。
でも、ついさっき目覚めた力が【行かないと後悔する】と言っている。
「っごめんキャス!ちょっとエース助けに行ってくる!!!」
「は!?火拳はもう助けたんだろ!?おい待て、トリシー!!」
キャプテンになんて報告すんだよ!!と叫ぶキャスを置いて、手慣れた錬成で走っていく。
「っ間に合え…っ!!!」
《この時代の名が…………
白ひげだァ!!!》
向かっている先で、怒りに燃える炎が見えた。
さらにこれ以上ないスピードで走り抜けると、赤犬がエースに燃え盛った拳を振りかざすのが目に映った。
「っ間に合えーーーーーっ!!!!」
「!!!???トリシーっ……、」
「ぬう!?じゃかしい…!!」
赤犬とエースの間に滑り込み、オートメイル側で渾身の蹴りを繰り出した。
ドンッ!!!
ジュワッ!
「っくぅ…!!」
「ッやめろ!どけトリシー!!お前が殺されちまう!!」
繰り出した蹴りはマグマの手で受け止められ、その熱はオートメイルの鋼すら溶かし始める。
「っエース、おっさんと言い合いしてる場合じゃないでしょう!!みんな貴方を助けに来てる、その想いを踏みにじらないで……!!!」
ひしゃげてしまった足を戻し、ギリギリまだ動くのを確かめるとエースを怒鳴り飛ばす。
目をまん丸にしてごめんと謝った彼を担ぎ上げると、白ひげの船に向かって猛ダッシュする。
「は!?!」
「白ひげの船までダッシュするから、後ろからの攻撃だけお願いね」
状況を飲み込んだ白ひげクルーが、エースとトリシーを援護しろ!!と言って助けてくれる。
「海賊風情がちょこまかと……!
だが、おぬしだけは生かしておけん…!!塵となれ…!!“犬噛紅蓮”!!!」
猛々しく燃え盛るマグマから犬の顔が飛び出て、今にも噛みつかんと追ってくる。
「っやば…!!」
「そのまま走ってろトリシー!!俺がなんとかする!」
「エース!?なんとかするって…!」
「さっき怒鳴られたからな、安心しろ。命を無駄にすることはしねえ!!」
「―――わかった、」
あのレベルの技をどうにかできるのか不安が過ったが、右足のオートメイルも限界だと軋んでいた。
この場はエースに任せる他、なかったのである。
「ぐ、ぅ…!!」
「もうちょっとだから…!耐えてエース!!」
ああ、熱い
灼ける匂いがする
私の大嫌いな匂いだ
「っ白ひげのおじ様!!!」
「うぉ!!?」
赤犬の攻撃で両腕が全焼したエースを、船にいた白ひげ目掛けて投げる。
「エースと一緒に早く逃げて!!エースも、その腕直さないと承知しないんだからね!!」
思わず涙声でそう叫ぶ。
あとは視界端にきていたキャスと合流して、船に戻るだけだった。
「貴様も年貢の納め時じゃあ」
「あ」
「「トリシー!!!」」
エースは無事船に戻り、白ひげも大怪我なく、あとはローと帰るだけ。
そう全員が張り詰めた呼吸を一息ついた油断だった。
トリシーの目の前まできていた赤犬が腕を振りかぶる。
「そこまでだァア〜〜〜〜!!!!」
「!」
「きゃっ」
覇気の籠った絶叫が轟いて、誰もが一瞬動きを止めた。
その隙をついてキャスがトリシーを抱いてその場を離脱する。
「ししし死ぬかと思った!!マジ、マジでやばいって!!おっまえ何やってんだよ!!!」
「めっちゃアドレナリン出てそうだねキャス」
「死ぬとこだった状況で第一声がそれ!!??」
「いや…キャスが来なくても、助かってたと思うな」
「お前…過大評価もいい加減にしろ…」
トリシーを抱いたキャスはそのまま潜水艦へ向かった。
「あ〜……一歩遅かったか、トリシー」
「……"赤髪のシャンクス"…」
“助かっていた”それは過大評価ではなく、理にかなった応え。
トリシーがいたところにはシャンクスが立っており、赤犬の攻撃を止めていた。
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