小説 | ナノ
轟対飯田が轟の勝利に終わる。
轟と飯田には悪いが二人の試合よりも1-Aのクラスメート達は次のバトルにヒヤヒヤしていた。
《準決二戦目!おおっと、幼馴染同士の対決かァ!?ここまでお互い圧倒的な戦闘センスで勝ち上がってきた、爆豪バーサス滑空!!アーユーレディ!?》
スタート!というミッドナイトの声が会場に響き渡ったのと同時、爆風が美鳥を襲う。
ーボガァン!!
《うわァ!容赦ねえ!!》
が、美鳥は一瞬のうちに飛躍し回り込む、
ーボボッ!ドォン!!
煙幕の中に火が走り、爆風で視界が開け、
気づけば美鳥の踵落としを爆豪が寸前で受け止めていた。
「反射神経化け物かよ…!」
「お互い様だよね…!」
くるりと体を反転させると二打三打と食らわせようとするが、全て避けられカウンターで爆撃される。
が、羽を使って爆破の軌道を反らした。
《上手い!爆豪立て続けに爆撃するが、滑空!全部避けるどころか翼で砕けた破片を巻き上げて、攻撃力抜群の突風が爆豪を襲う!!なんだこの戦い!戦闘力だけならそこらのプロヒーローより上だぞ!?イレイザーお前のクラスやべえな!》
「滑空が強くて同等っぽいから麗日の時よりまだ見てられるけど…」
「二人ともガチすぎて…」
「爆豪、手が滑りそう」
「滑空に大けがは負わせないだろ、」
だって、あの爆豪があんなに必死になってる。
切島は本当の姿の爆豪を見たようで目を見張っていた。
彼が美鳥を特別視しているのはずっと気づいていた。
ただ、それを表に出すことはなかった。
「オラァ!!!ぜってえ、負かしてやらァ!!」
「私だって!!負けない!」
ードガァン!!
「いいから諦めろや!!!どうせ俺には勝てねーんだからよォ!!」
「なんで今更つっかかるの!!?私の夢がヒーローだって知ってたはずじゃない!!」
小さくだが、聞こえてくる2人の怒声。
「え?緑谷、滑空が爆豪に勝てないって…?」
「基本的に戦闘後半から強くなる、後期晩成型のかっちゃんは、発汗することで強くなるから後半になって体が火照ることでその威力を倍増するんだけど、美鳥ちゃんの個性は火を使うから、それを促進させてしまうんだよね。で、さっき常闇くんとの対決で言ってたように火のほうの個性に時間をかけたから、鳥のほうの個性はそこまで応用がない。」
エンデヴァーのところにいたら、そうなるのも必然だとは思うけどね。と説明してくれる緑谷。
その瞬間、ドォンッ!!!と一際大きい爆発によりフィールドが破壊される。
瓦礫が突風によって舞い上がり、爆豪を攻撃するが、
「あァ知ってンよ!俺が言ってんのはテメーを犠牲にすんなって、いってんだよ!!」
麗日戦の時よりも大きな爆発で瓦礫を粉々に吹き飛ばした。癇癪を起こしたようなそれは、爆豪の気持ちを表しているようで、振動だけでなく身に染みるようだった。
「は…?なんなの、私がどうしようと、かっちゃんに関係ないじゃん…」
爆豪の思いもよらぬ珍しい主張に、美鳥の声も震える
「ふ、ざけんな!!!」
爆豪から聞いたこともないほどのヒステリックな怒声だった。
思わず美鳥は瞠目し、ぎこちなく動きを止める。
「てめぇが言って、庇ったンだろうが…!俺のことも、…デクも!…幼馴染を心配すんのは悪ィことかよ……」
「、っ」
まるで、泣いているような声音だった。
爆豪はギッと顔をあげると美鳥を睨みつける。
「ヒーローは人助けてナンボっつったのはてめぇだぞ!!誰か庇って犠牲になるくらいなら、片棒くらい担がせてみろやァ!!!」
言い切った爆豪に耳郎は息をのんだ。
まさか彼がそんな言葉を言うなんて。それほどまでに彼女のことが大切で、きっとこの間のUSJ襲撃事件が相当トラウマなのだろうと。
そんな爆豪に思わず美鳥もちょっと冷静さを取り戻し、申し訳ないような顔になる。
「…ごめん、まさかかっちゃんがそこまで気にしてるとは思ってなくて、」
「ハァ!!?気にしてねーわ!!!っだから、今ここで完膚なきまでにブッ飛ばして、お前が弱っちィことを自覚させて、無理やり片棒担がせてやるんだよォ!!!」
「「「何ィ〜〜!!?」」」
いい話で終わるかと思いきや、どっちにしても腹が立つからブットバス!!と美鳥目掛けてハウザーインパクトを繰り出す爆豪。
「ッハハ、いいよかっちゃん。受けて立つ…!!」
「美鳥ちゃんまで!?」
ピキリと青筋の立った美鳥もぼわり、と常闇戦で見せた時以上の火力を背負う。
“ハウザーインパクト”!!!!
“鳳凰、聖槍(ロンゴミニアド)”
それは高火力のため碧い炎と黄色い炎が混じり、今までみせたことのない火力を表していた。
その炎で一瞬模られた鳳凰が槍へと姿を変え、放たれる。
爆豪のハウザーインパクトを防御するのではなく、威力相殺をしたのは美鳥も怒っていたからだろうと、のちの緑谷はいう。
「爆豪のやつ、女子相手にハウザー打ちやがった…」
「滑空相手に大技出さないだろって言ってなかったか?切島」
「あはは…」
まさかの展開に思わず切島も空笑いになる。
「けほっ、けほっ…すんごい威力…ようやく煙が晴れたわね、」
「おっとォ…?両者選手、地に伏している!これはドローかァ!?」
マイクの実況通りの状況に、ミッドナイトがカウントを取ろうとした時、
「んなわけ、ねーだろうが…!!」
一足先に爆豪が立ち上がる。
「ヒュー!!さすがだぜ爆豪!!!滑空はどうだァ!?」
「…っハ、(危なかった、まさかあいつが威力相殺を計るなんて思いもしなかったから。あいつが防御して跳ね返る衝撃を逃そうと先手を打ったのが勝因だったな。)」
防御をした爆豪に対し、防御皆無の滑空。結果は歴然だった。
地にたたきつけられた滑空は完全に意識を飛ばしていた。
「勝者!爆豪くん!!」
「オメーの覚悟は受け取った」
ミッドナイトが勝者を叫ぶ中、爆豪は倒れた滑空に近寄るとボソリと一言つぶやいて、ボロボロの体で滑空を横抱きし、救護室へ向かった。
「ん〜!青春ね!!!」
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