小説 | ナノ
「“三奈、ごめんね”、だって〜!!もう惚れちゃうよねかっこよ!!」
「いやいやいや」
自席に戻ると、試合のことを冷やかされていたがそんな空気も、焦凍くんといずくんの試合の雰囲気に飲み込まれて消える。
「なんかやっぱ慣れないんだよなあ、いずくんが個性持ってる姿…」
「デクくんはすごいよ!!」
「お茶子はいずくん好きだねえ」
そんな中、クラストップの焦凍くんと幼馴染のいずくんが戦ってる姿に違和感を覚えてしまう。
自分の中ではまだまだ無個性でかわいい、幼馴染のいずくんなんだなと思いながら試合を見ていた。
「緑谷、ありがとな」
試合も終盤に差し掛かった時、いずくんが“君の力じゃないか!!!”と叫んだ。
それを聞いた、焦凍くんは心に刺さるものを感じたようで久々に左を使った。
いずくんも応戦したが、結果的にいずくんは敗退。
二人の個性でハチャメチャになった会場をセメントス先生が直している。
「何、あれ…レベちじゃん轟…!」
「久々に見たなあ左使ってるとこ」
「あれ見たあとの感想がそれ!!?」
飯田が塩崎に勝ったのを見届けると、急いでフィールドに入る。
次の相手は、常闇踏影。
《一対一なら最強か!?常闇!結局エンデヴァーとはどういう関係!!?唯一残った女子、滑空!!》
「気になりすぎでしょ…マイクせんせ」
完全に私情入りの実況だあと呆れた笑いが出る。
そんな笑いもつかの間、「START!」というミッドナイトの号令とともに常闇がダークシャドウを飛ばしてくる。
「推して参る!!」
「うっわ、やる気満々じゃん常闇くん!」
《ダークシャドウの連撃だァーーー!!滑空に考える余地を与えないつもりか〜!?》
初撃を翼を出して避けるが、ダークシャドウの攻撃が続く。
「悪いが負けるわけにはいかないのでな!」
「へぇ〜奇遇だね、私もだよっと!」
ダークシャドウと体術の応酬になる。
懐に入られると弱い常闇くんはさすがにそう簡単に入れてくれなかった。
「ん〜!」
《唸ってどうした滑空―!》
「埒が明かない!!」
そう言うと一度飛んで距離をとり、一気に常闇君の両サイドを炎の壁で埋めると、中心に立ち常闇くんへ両手を向ける。
《なんだ!?何する気だァ滑空―!!》
「焦凍くんが半冷にかけた分の時間、私もこの炎にかけた。」
「フミカゲ!!ナンカヤバイッテ!ドウスル、ドウスレバイイ!?」
「落ち着け!ダークシャドウ!」
「悪いけど負けるわけにはいかないんだ、“赫灼熱線”!!」
―カッ!!!!
ボカァン!!!!
一度だけ間近で見せてもらった“赫灼熱拳”。
まだまだ未熟で完成できなかったから、威力を少し下げた熱線として押し出す。
炎の壁で逃げられない常闇くんはダークシャドウで防御したもののモロに食らった。
「…滑空もレベちだわ…」
控え席で芦戸にそんなことを言われてるとは露知らず、美鳥は体にこもった熱に悶えていた。
「ハアッ、ハアッ…!(半冷をもつ焦凍くんと違ってさすがに熱を逃がすのは難しいな)」
《“赫灼熱線”!!?まさかエンデヴァーの“赫灼熱拳”アレンジかァ!?じゃあエンデヴァーとの関係って師弟!!?》
《マイクいい加減うるせえ》
《いやいやイレイザー、お前のクラスほんとになんなの》
「常闇くん場外および戦闘不能!!滑空さん、三回戦進出!」
どよめきのような会場の歓声の中、ぽかんとしていたクラスメート達が我に返り始める。
「滑空やばくね!?威力エゲツねーしエンデヴァーの技使うとか…って轟、顔顔!!」
「およそイケメンがしてはいけない顔になってる…!」
「つーか、そうか!滑空って轟と仲いいもんな!それでエンデヴァーと知り合ったのか」
「あ、轟の顔戻った」
興奮気味にバトルを振り返る彼らだったが、
観客席に##が戻ってきたことで、緑谷は慌てて駆け寄った。
「美鳥ちゃん!ベスト4おめでとう!」
「あ、いずくん!ケガ大丈夫!?」
「大丈夫だよ!美鳥ちゃんのバトルが見たくて慌てて帰ってきたんだ」
緑谷のおかげでほんわかとした空気が戻ってきたかと思った数分後、準決勝の美鳥の相手が爆豪に決まり、ここ二週間喧嘩ばかりの2人の因縁の対決にクラスは不穏な空気でざわつくのだった。
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