小説 | ナノ




「いやだ。ぜってえ教えねェ。」


「あなた…、あのねぇ!」


あのあと、ウィンリィがエドに伝えたそうだがどうやら夫婦で食い違ったらしく、喧嘩が勃発した。


「いい加減にしてエド!向こうにはトラファルガーさんや姉さんの仲間が待ってるのよ!」



「仲間がなんだ。海賊だろ?どうせ待ってなんかいやしねえよ。」


「そんなことないわ、みんな待ってるのよエド。」


「姉貴だって、いつ見殺しにされるかわかんねえだろ。」


そう簡単に考えを変えそうにない頑固なエド。
これが里帰りでゆっくりできるのであれば問題なかったのだが、こちらも仲間の安否を考えるとそこまで猶予はない。


「そうね、確かに危険な世界だけれど。

エドにも家族を護りたいように、私にも護りたいものがあるの。だから、お願い私を帰して。」



「ダメだ。
ここにいろ、みすみす危険な場所へ帰せるか。」



「エド聞いてお願い」


「っ聞き分けるのは、姉貴だろ…!」



私とエドの間で睨み合いが続く。



「お前はいいのか!アル!」


「…僕だって嫌だけど、兄さんと姉さんが険悪になる方が嫌だし、姉さんは約束してくれたから。」


「約束…?」


「必ずあちらとこちらを行き来出来る方法を見つける。」



私の決意を聞いてギリッと悔しそうに歯をくいしばるエド。



「なんでっ、なんでだよ姉貴…!俺は、幸せになって、ほしくて…!!」



「うん…わかってる、ごめんねエド。
それでも私は幸せだったし、これからも幸せになるのよ。」


父さんがいなくなって、母さんと私だけになった時私が稼がなければと思った。この小さな幼い命達と、か弱い母を守り抜くのだと。
そんな中、父さんが私に残してくれたのは錬金術だけだった。私は軍の犬になって死にものぐるいで金を稼いだ。
私はいつだって笑っていた、でもエドは気付いていたのだろう、とても優しい子だから。



「ックソ…!っふざけんな…、姉貴は俺らの全てだったんだ…!!それを掠め取りやがって!
しかも海賊だァ!?


ぜってえ幸せにしろ…!!じゃなけりゃ呪い殺してやる!!」


「…ああ、誓おう。」



グチグチとローに文句を言うエドをウィンリィと眺める。











「……少しだけ、嫉妬します」


「え?」


「姉さんに。
姉さんは、私の憧れで私の欲しいもの…なんでも持っていたから。
私はあの人の隣で戦うことは出来なかったから。」


「エドのことね。
私には戦う術があっただけよ、貴女にしか出来ないこと…あったでしょう?」


「無い物ねだり、ってやつかもしれません。
そういう、聡明な所も私の憧れで
ずっと姉さんになりたいなって思ってたんですよ。」



「可愛げのない私になってもそんないいことないわよ、きっと。」


ポツリポツリと走馬灯を思い浮かべるように、ウィンリィと話す。



「っふふ、気付いてないんですね
姉さん。そんなところがツボなんじゃないですか?」



「?なんのこと?」






「ほっとけねーんだよ、危なっかしくて」


突然後ろから聞こえてきた声にあたしのこと!?と振り返ると抱えられた。



「ちょ!?降ろして!」



「さっさと帰るぞ」



「ちょっと、聞いてる!?」



歩き出したローに慌てるが、ウィンリィは笑って見送ってくれた。




「義兄さん言ってたよ、


"そんなトコが ツボなんだけどな"って」






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