小説 | ナノ
無事、中央へと帰りホッと一息みんなでお茶をしていた。
「しっかし…成長したわねぇ〜!エド!」
「へへっ!まーな!!…………っじゃなくて!!
姉貴今までどこにいたんだよ!!?」
すっげー!!探したんだぞ!!とキャンキャン吠えまくるエドに思わず耳を塞ぐ。
「あ、ああ〜…ごめん、ごめんて。
とりあえず無事なんだし、小さいこと気にしないでよ〜」
「誰が豆粒ドチビか!!!」
「成長して大きくなったんだろうが、鋼の。玉尖のも、小さいことではないぞ。」
「ハッ!そうだった」
「そうよ、トリシー。貴女がいなくなってからは大変だったんだから。連絡するって約束したのに、1年経てど2年経てど、なんの連絡もない。
大佐は出張と称して貴女探しの旅に出ようとするし、ハボックは言わずもがなで上の空だし。エルリック兄弟に関しては目も当てられなかったわ。」
何か言うこと、あるわよね?とリザさんに凄まれゴメンナサイ。と頭を下げた。
そしてエドにも同様にこれまでのことを報告する。
「は〜、異世界なぁ…」
「そうなの。
あ、それでちょっと調べたいことあるから色々見たいんだけど、まだコレ使えるのかしら?」
チャリッと銀時計を出すと、そういうだろうと思ってもう申請済みだから好きに使い給え。と大佐が笑う。
「今度は何するつもりだよ」
「やぁねぇ、人を問題児みたいに。」
「実際そうだろうが」
「別に問題起こさないわよ、帰る方法を探すの。」
「「帰るゥ…!!?」」
「!?か、帰るわよ…?」
帰ると言った瞬間、弟達がグワッと迫る。
「帰る必要ねーだろ!むしろこっちに戻ってきて正解なんだからよ。」
「そうだよ!大体せっかく平和になったのにそんな危険な世界に帰すと思ってるの!?姉さん!」
「ええ…、ちょっと引き止められるのは想像してなかった…予想外だわ、どうしようハボック」
「いやなんで俺に聞くかな!?
言っとくけど俺も帰す気ないからな?」
みんなして帰す気はないと言われ、どうしようと思っているとそれまで黙っていたローがスクッと立ち上がる。
「フン、上等じゃねえか。
俺は海賊だ、欲しいものは奪って行くぜ…?
なぁ、義弟(おとうと)くんよ」
「「おとうとって呼ぶな(呼ばないでください)!!」」
「ッチ、表出ろ!俺は認めねーからな!!」
「やめなさいよ、エド」
「うるせー!俺が勝ったら姉貴はこっち残るんだからな!」
「ヘェ、なら俺が勝てば連れてくぜ?」
とローが笑うと、そんなモヤシ男に負けるか!!とプンプン怒りながら外に出て行くエドと、僕も付き合うよ!とアルまで出ていった。
「たぶんムリだと思うけどな〜」
銀時計を手に図書館へ向かうトリシーが出て行った数分後、エルリック兄弟が吹き飛ばされて家1つが破壊されたとかなんとか。
ペラリペラリと紙をめくる音が響く中、殺気がバチバチと音を立てるように向き合う。
「は な れ ろ」
「い や だ」
「どっちも離れて、邪魔。」
帰り方を探すトリシーにべったりとくっつくローとエドだったが、トリシーに一蹴されてスススッと定位置に戻る。
「まだ見つからねェのか?」
「見つからなーい…、文句言うなら一緒に探しなさいよね」
「錬金術の関してはお前のが詳しいだろう。俺が探しても探さなくても対して変わらねェよ。」
それより少し歩いてくる。と図書館から出て行ったローは目ぼしい武器でも見つけたのだろうか。
「トリシーさん、お疲れ様です」
「あら!ウィンリィ。久しぶりね、いいのよお姉ちゃんで。」
「えへへっ、変わらないですねトリシー姉さんは。」
エドと交代で一息ついて下さいと、ウィンリィが持ってきた紅茶を一口飲んで談笑する。こちらにいた頃と違って少し落ち着いたように見えるのは母になったからだろうか。
「あー、ねっ!」
「あら、こちらの可愛らしいお姫様は?」
「あ、姉さんの邪魔しちゃだめよ。
この子はエリィ、ウィンヤードの妹です。」
「ふふ、ウィンリィにそっくりで可愛らしいわ。」
まだ幼いエリィは、小さい頃のウィンリィのようでとてとてと、歩く。
「姉さん、聞いてもいい?」
「なあに?」
「あの男の人…、どうしてトラファルガーさんについて行くの?ここにいては、だめなの?」
ああ、ウィンリィ。貴女も私を心配してくれるのね。と笑えば、当たり前じゃないですか!と怒られた。
「…そうね、
ウィンリィは何故、エドだったのかしら?」
「もう姉さん、私が質問してるのよ?」
「いいから」
「……昔だし、あまり覚えていないけどあの人に、エドに惹かれたの。輝いて、見えたのかな…」
「うん、同じね。
私も惹かれた、彼に捕まってしまったのよ」
彼が王になる姿を見たくなった。
そう言って紅茶を一口飲めば、ウィンリィは至極嬉しそうに、そっか。と言って笑いエリィを抱き上げ、エドに伝えてきますね。と話す。
「何を?」
「早く義兄さんと姉さんを帰してあげてって。」
にっこりと笑うウィンリィにハッと気づく。
「なるほどね、そういうこと…」
おそらくエドも私を帰す方法を探していたのだろう、そこで私よりも先に見つけてしまったのだ、その方法を。
そして真意を求めた。納得のいくものであれば、教えてくれるつもりなのだろうか。
「いつからあんたは私の父親になったのよ、エドワード。」
ポツリと吐き出した悪態は図書館の静けさにのまれた。
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