小説 | ナノ




襲撃後、教室に戻った1-Aの生徒たち。

相澤や13号、オールマイト、そして緑谷の怪我の具合や滑空、この度の激闘の話題で持ちきりだったが、やはり敵の恐怖を目の前にしたショックでいつもより口数は少なかった。


「「「ハァ!?1回死んだァ!!??」」」

「うん、えへ」

あの時、近くにいなかった生徒たちに現状を説明するとそれは大層驚かれた。
まあ死んだのだから当たり前だが。

エンデヴァーと訓練を始めだいぶ経ったあたりから、個性でできることが増えた。
それは“火の鳥”という個性の枠組みを超越していたことから、そろそろ個性届の変更をしなければと思っていた頃だったのだ。


「いやいやその体もだけどさ、どういうことよ美鳥ちゃん…!」

「ほんとだぜ!?俺らめっちゃ焦ったんだからな!!な!爆豪!」

「焦っとらんわ!!!!」


切島くんや上鳴くんが、かっちゃんに同意を求めると言い返されていた。
確かに説明は必要だよねと話しはじめる。


「あの時、動かないとかっちゃんが死んじゃうって思って、」

「ふざけンな!死なんわ!!!」

「とりあえず黙って聞こうぜ爆豪!」


切島くんのおかげで静かになったかっちゃんを見てから再度話す。
ただ闇雲に庇ったわけではなく、生き残れる勝率があったこと。そしてそれは自分の技であったことを伝える。


「“其は炎から蘇る(フェニックス)”
技名の如く炎から蘇ったところを見たと思うんだけど、一度だけ攻撃を全吸収する技なの。その攻撃が弱かったら問題ないんだけど、重さによっては今回みたいに心肺停止するけど、こういう感じで蘇る。」

まあ、1日幼児化しちゃうんだけどね。と八百万に作ってもらった服を着て笑う。
笑う美鳥と対照的にピリピリと威圧を放つ爆豪が、不穏な空気をさらけ出していた。


「…成功するってわかってたンか?」

「いや〜、実はうまくいかないこともあって半信半疑だった」

「あァ!?!死んでたかもしれねーじゃねーか!!!」

ざけんな!成功率100%にしてからやれや!!と怒鳴る爆豪に、だってやってなかったらかっちゃん死んでたかもしれないじゃん!と言い返す滑空。


「てめーがやらなくったってオールマイトがやってたんだよ!!」

「オールマイト関係ないでしょ!誰が助けたって同じじゃん!」

「ふ、ふたりとも…」

言い合いが激しくなり、そろそろ止めたほうがいいのではないかとクラスメイトが思い始めた時だった。


ーダンッ


美鳥の胸ぐらを掴んで壁に押し付けた爆豪にクラスがざわついた。


「お、おい爆豪!やめろって!」

「なに、美鳥に手ェあげてんだ」


咄嗟に切島と、近くにいた轟が止めに入るが爆豪の耳には入らない。


「誰が助けてくれなんて言った…!!てめーは俺の後ろでずっと守られてりゃいいんだよ!!」

「言ってないよ!でも、ヒーローってそういうもんでしょ!お節介が本質だもの、友達一人助けられなくてヒーローになれるか!」

痴話喧嘩かと言いたい内容だが、爆豪の威圧にも負けじと言い返す美鳥に、周りがハラハラし始める。

「ンだと!?てめェ、少し強くなったからって調子にのんじゃねーぞ!!助けたところで死んでちゃ意味ねーんだよ!!生きて助けろや!!!」

「蘇ったもん!!」

「だァら一回死んでんだろうが!!!」

いつのまにか言い争いから取っ組み合いの喧嘩に変わってしまい、切島も轟も狼狽える。
爆豪に掴みかかって頬を引っ張る美鳥に、胸ぐらから手を離さず振り回す爆豪。


「もう!!うるさい、かっちゃんのバカ!」

「テメーの方がバカ!」


ネタが尽きたように子どもみたいな言い合いのあと、互いにもう勝手にしろ!と顔を背ける。
美鳥が個性の影響で小さいものだから、余計に面白くて思わず切島は肩を震わせてこっそり笑ってしまった。


(爆豪がガキみてーに突っかかってる!)


プライドと自尊心の塊のような彼が、感情をさらけ出してぶつかるものだから珍しい。
しかも小さい体が慣れない美鳥を言い合いしながらもさりげなくフォローしている。
ほかのクラスメート達も最初は驚いていたものの、少しずつ生暖かい笑みを浮かべ始めている。


「私もう帰る!」

「はぁ!?その体で1人帰れるわけねーだろクソ美鳥!」

「あっ、美鳥、緑谷待たなくていいの?」

「そうだった!やっぱ私帰らない!」


テメーいつもデクばっか贔屓してんじゃねぇぞ!誰かと一緒に帰らねえと許さねえからな!!!
と謎の不満を言いながら爆豪は帰っていった。







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