小説 | ナノ
「というわけで、エンデヴァーさんには申し訳ないんですけど、お願いします。」
「仕方あるまい、承る。ただ登下校の護衛は訓練も兼ねて焦凍に行ってもらう。」
「え、焦凍くんに迷惑では…?」
「文句があるのか?焦凍」
「あるが、…まあいい、やってやる」
「いいの!?ありがと!」
翌日さっそく轟家にお邪魔して、事情を説明すると快く引き受けてくれた。
学校が同じなこともあり、登下校は同じくヒーロー志望の焦凍くんが護衛してくれることになった。
「…なにもないね」
「何もないのが一番だろ」
「いやそうなんだけどさぁ…ナンバー2にここまでしてもらって何もないと、拍子抜けっていうか」
「あんなやつこき使ってやればいいだろ」
護衛を始めて1か月が経とうとしていたが、特になんの変化もなくいつも通り。
家の前まで護衛してくれるエンデヴァー事務所に申し訳ない気持ちが出てきていた。
「あ、じゃあ焦凍くんにもお世話になってるし、ジュース奢るよ!なにがいい?」
「なんでもいいが・・甘すぎねえやつがいい」
「おっけー!わかった、ちょっとまっててね!」
そういってベンチに座って待つ俺。美鳥が自動販売機にジュースを買いにいった瞬間だった。
「っきゃあ!?」
「へへっ、ターゲット確保〜!」
「ってめえ!!」
ズガガガガガ!!!!
「は!?なんだこれ!?」
三下雑魚のような風貌の敵が美鳥の腕を引っ張って、無理やり車に乗せる。
すぐさま氷結を繰り出して止めようとしたが避けられた。
「あいつの個性かクソッ!おいスピード上げろ!!」
「離して!!」
「うるせえ!大人しくしろ!!」
ガッ!!
「うっ…」
「美鳥!!!!てめえら待て!!」
美鳥が逃れようと暴れると雑魚の奴らに殴られて気絶する。
スピードをぐんぐん上げる車にこのままだと見失うと、背に腹は代えられず親父に連絡する。
「美鳥が攫われた!!公園から黒いバンで逃げようとしてやがるっ、先回りしろ!」
「なんだと…!?そのまま追跡を続けろ、そのあたり一帯を包囲する!!」
「ああ!!」
生まれて初めて親父と息があった瞬間だったかもしれない。
「ハア!?!ナンバー2!?なんでこんな小さな事件にナンバー2が出てくるんだよ…!!」
「事件に大きいも小さいもないわ…!さっさと降伏してその子を放さんか!!」
「聞いてねえぞ…!!クソがーーーー!!!」
近接型の個性だったらしく、腕を振り回して向かっていくがエンデヴァーにねじ伏せられて終わった。
「美鳥…!!美鳥!!」
「ぅん…、焦、凍くん…?」
「大丈夫か?!敵は倒したが、ケガとかしてねえか!?」
「うん、大丈夫っぽい、助けてくれたんだね…!ありがと!」
「ああ…いや、寿命が縮んだぞ」
「それは、ごめん…」
その後、捕まえた敵を尋問するとどうやら本当に三下の雑魚だったようで、何も詳しいことを知らず情報は得られなかった。
「いいか、美鳥。お前もう俺のそばから離れるな」
「えっ」
「そうだな、それがいい。焦凍、目を離すなよ。」
「当たり前だろ」
この事件をきっかけに轟家の過保護が10上がった。(テテーン!
「あ〜ぁ、失敗しちまった。先生とやらの手土産にするはずだったのになあ。
でも、いいなあ、あの子
まあたっぷり時間はある、待ってろよ美鳥チャン」
公園近くの森、真夏の熱に交じって高ぶった蒼い炎が煌めいた
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