小説 | ナノ
卒業式も無事終えて、3月中に引っ越しを行った。
いずくんやかっちゃんとはケータイ番号も交換したので、これでかっちゃんに怒鳴られることはないだろう。
お母さんも目は覚ましたが酷く弱っているようで、長い時間起きてはいない。新しい病院にも転院を終え、親戚の医療個性をもった人に見てもらっているところだ。見てもらえばすぐに治ると思っていたが、話はそう簡単ではないらしい。お父さんも仕事があるし、これは本格的に家事ができるようにならないと、と思っていた矢先。
「すまん!美鳥!急な仕事で今日帰れなくなっちゃったんだ。」
「大丈夫だよお父さん、一人で留守番できるしご飯は買えばいいもん」
「いや、母さんのこともあるからお前も襲われないか心配でな。父さん、知り合いに頼んでおいたからそこに行きなさい。今日1日面倒見てくれるそうだ。聞いて驚け〜、ナンバー2のお家だ」
「え!エンデヴァー?!すごい!わかったありがとうお父さん!」
「帰りは迎えに行くから、お行儀よくな」
「はあい」
近くにナンバー2の家があることにも驚いたが、今日その家に1日訪問するとわかってワクワクしていた。
「…すっご、おっきい家だなあ」
「はーい」
インターホンを押すと若い女の人の声が聞こえ、名前を伝えるとどうぞと言われたので門をくぐる。
「あ、初めまして本日お世話になる滑空美鳥です。よろしくお願いします。」
「うわあしっかりしてる…こちらこそよろしくね、私は轟冬美っていうの。好きに呼んでね美鳥ちゃん!
こっちは弟の焦凍。美鳥ちゃんと同い年なんだよ〜」
「…」
家にいたのは白髪に赤毛交じりの少し年上である冬美お姉さんと、同い年の焦凍くんだった。おそらくエンデヴァーのご家族なのだろう。ご本人はいないのだろうかとキョロキョロしていると冬美さんが答えてくれた。
「あ、もしかしてお父さ…エンデヴァー探してる?今日ね、まだお仕事でもう少ししたら帰ってくるよ!」
「あっ、なんかすみません…ありがとうございます」
「…あんなやつ帰ってこなくていい」
「コラ、焦凍!…ごめんね、ちょっといろいろあって」
「…焦凍くんがなんでお父さん嫌いなのか私にはわかんないけど、それでもやっぱりいてくれたほうがいいと思うなあ」
「…ふん、」
「あっ、焦凍!…美鳥ちゃんごめんね悪い子じゃないんだけど」
焦凍くんは私の言葉が気に障ったのか、顔を歪めて家の奥に入って行ってしまった。
結局その後も出てくることはなく。冬美さんとお喋りして過ごしていた。
「今帰った」
「あ!おかえりなさいお父さん」
「あっ、おじゃましてます!あの、私…!」
「焦凍はどこだ?」
「ちょっとお父さん…!」
初めて垣間見たエンデヴァーは私なんていないかのように一直線に焦凍くんをみていた。その目をみて何となくだが彼が受けている所業を私は感じていた。
「話は鷲幻から聞いているが、俺は君に用はない。預かるのは構わないが、俺と焦凍の邪魔はするな、以上だ。冬美、道場に焦凍を呼べ。」
「呼べって、…お父さんそろそろ夕飯の時間だし…!お客様もいるのに」
「飯を吐くことになるよりいいだろう、」
「でもっ」 「焦凍くんのお父さん、今から修行するんですか?」
「そうだが?」 「私も参加していいですか?」
「美鳥ちゃん?!」
「ほう…個性はなんだ?」 「お父さん!!」
「火の鳥です。全身から碧い炎を出して攻撃します、使いようによっては治すこともできます。」
「フン、悪くない。いいだろう、ついてこい。」
驚いてふためく冬美さんに、笑ってしごかれてきますと伝えてエンデヴァーの後を追った。
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