小説 | ナノ
「え?…先生今なんて?」
卒業間近となったころ、授業中の私に悲報の知らせが届いた。
「いいか、滑空。落ち着いて聞くんだ。お父さんから連絡があってな、お母さんが事故にあって今病院にいるそうだ。早退して急いで病院に向かいなさい。」
両親はプロヒーローではない普通のサラリーマンだ。だからこそケガで病院に搬送されるなんて考えてもいなかった。今私にできる限りの速さで病院へと向かう。
「お母さん!!」
「美鳥!」
「お父さん、お母さんは?大丈夫なの?」
「ああ、一応命に別状はないんだが・・母さんの親戚に医療に詳しい人がいてね、春からそちらに引っ越すことになりそうだ。ごめんな##」
「引っ越す…、うん、わかった」
引っ越すことはもちろん衝撃だったが、そのあとお父さんから聞いた説明のほうが私の心を揺さぶったのだ。
お母さんのケガは事故ではなく敵によるものではないかとのことだった。何らかの事故に巻き込まれ道端に倒れていたとのことで、命に別状はないものの、個性因子が酷く傷ついているそうだ。もしも本当に敵よるものだとするなら、何が目的でお母さんを襲ったのか…。
「ええ?!引っ越す…!?」 「ハァ?!引っ越すだァ?!」
「うん、ごめんね。いずくん、かっちゃん」
翌日、いずくんとかっちゃんの二人には先に話しておいたほうがいいだろうと、呼び出して昨日あったことを話した。
そして引っ越すため、同じ中学に通えないことを。
「悲しいけど仕方ないよね…美鳥ちゃんのお母さんも心配だし」
「…中学どこ行くんや」 「ちょ…かっちゃん」
「えっと凝山中学だったかな…」
「さすが美鳥ちゃん…!」
「ッエリート校かよ!…仕方ねーから中学は諦めてやるが、高校はぜってー雄英だぞ。」
幼いころからヒーローを、そして高額納税者を目指すかっちゃんは輝かしい公歴のため、最難関の雄英を受けることを決めていたのは知っていたが…まさか私にまで強要してくるとは…。
「まあ私もヒーロー目指してるし、雄英にはいくつもりだからいーけどさあ…」
「なんか文句あるんか」
「ないけどー、あ。そうだかっちゃん、だから卒業を機に別れとかないとね。」
「あ?!何言ってんだ、俺は別れるつもりねーぞ!」
「え?だって一緒にいないんじゃフリの意味ないし設定もさあ…」
「バッカ…!おま、デクの前で…!!」
「ん?いずくんフリだって知ってるよ?話したし」
「えへへ…ごめん、実はそうなんだかっちゃん」
「あァ?!!話したァ?!チッ、クソデクが…」
「まあほら、連絡が取れるならいいんじゃない?美鳥ちゃんもお母さんの看病でなにかと忙しくなっちゃうだろうし…」
結局いずくんとかっちゃんをなだめ、高校は雄英でと再会の約束をして別れを告げた。
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