小説 | ナノ
「いだっ!かっちゃん、やめてよう…」
「うわぁあぁん!」
「うるせー!デク!言うこと聞けよ!」
「もうやめなってば、かっちゃん」
「!ふんっ」
小学校に上がっても、かっちゃんがいずくんを蔑ろにするのは変わらなかった。
ただ、私が出て行くと何故か不機嫌に去って行くことが多くなった。
「美鳥ちゃんごめん…」
「なんでいずくんが謝るの…」
「…いっつも手当してもらってるから?」
「疑問系になってるよ(笑)
いいんだよ、いずくんがかっちゃんからみんなを助けてるみたいに、私はいずくんを助けてるだけだから」
「…!そっか、そうだね(笑)でもすごいなぁ、あったかいよ美鳥ちゃんの炎」
「えへへっ、まぁね」
まだ不安定な個性だが、碧い炎は治癒の力があることが最近発覚し、よくケガするいずくんが主に患者となっている。
小学校高学年になった時だ。
かっちゃんに呼び出され、校舎裏にきていた。
ドンッ!!
「おい美鳥」
「なに、かっちゃん…」
いつかくるとは思っていた。
かっちゃんが気に入らないいずくんを勝手に治す私。最近ではケンカを止めに入ることもよくある。
釘刺しに来たのだと思っていた。
心なしか眉間の皺が3割増しである。
「お前、
俺の女になれ」
「…………………は?」
予想外すぎた。
えっ、は?
何が起こってるのか整理しよう。
そう頭をフル回転させたときだった。
「彼女のフリしろって言ってんだよ!!
誰がテメーみたいなやつに告白するか!
最近目障りな奴が多いからな!」
「えっ、はぁ…ああ、なるほど」
真っ赤な顔で怒り散らすかっちゃんをみてちょっと冷静になり考えてみる。
そう言われれば確かに最近かっちゃんはモテる。まあ元々イケメン枠なんだけど、個性や才能マンもあってそれはモテる。
きっと呼び出しなどがウザったく感じているのだろう。
「いやでも、私じゃなくてもいいんじゃない?それこそ告白してきてくれてる子の中から選べばーーー」
「テメー…逆らうんか
俺への返事は"YES"か"はい"だ」
「…はい」
めっちゃ凄まれた…実質1択かよ
まぁ爆破されるよりマシか、犬猫のようにパシリにされるかもしれないが。
くらいにその時は思っていた。
「ば、爆豪くんっ…あのね、これっ」
「あ?…おい美鳥」
「あ、はーいかっちゃん」
「悪いな、彼女いるからムリだわ」
「そんな…」
手紙や呼び出しに会うたびに、かっちゃんに呼び出されるが、至って肩を組まれるくらい。
「滑空さん!もしよかったら僕と…」
「あ…」
「ウッセエ!散れ!!」
「ヒィイ!」
ヒーローを目指す私にとっても、かっちゃんと同じく恋は今必要のないもので、むしろ私の虫除けにもなってwin-win状態だった。
「…ちょっと脅しすぎでは…?」
「あ?!…イヤなんか」
「いやー…最低だなぁと思ってたけど、すごい楽だし、むしろwin-winだなぁと思ってます…」
「ハッ!そうだろ!」
よく思いついたねかっちゃん。というと、一瞬真顔に戻ったものの、たりめーだ!といつもの調子に戻った。
「美鳥ちゃん!!」
「いずくん?」
「か、かかか!」
「…か?」
すごい形相でいずくんが近寄ってきたと思ったら、慌てているのか、"か"を連発する。
面白い(笑)
「かっちゃんと付き合ってるってどういうこと…!!!?」
「…ああ!」
脅されてるの?!と聞いてくるいずくんに、そういえば話していなかったと、本当の話を伝える。
「…なるほど、なるほど…?」
「わりとwin-winな関係になれてると思うよ、ちょっと思ったよりいい案でびっくりしちゃった。」
「あ…まぁそれはよかったね。知らなくて焦っちゃったよ…(かっちゃん本気で告白したんじゃ…、まぁライバルだからいっか…)」
「ごめんごめん、まぁでもそゆことなのでよろしく」
あまりにも上手くいくので、結局その設定が板につき、幼馴染で困ることもないため卒業までその関係は続いた。
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