小説 | ナノ

「で、何が目的だ?」


「一つ目はこれを修繕していただきたいです」


ガシャン、とアイゼンの前にひしゃげてしまった"足"を置いた。


「こりゃ酷くやったな!一つ目っていうと、他にもあんのか?」


さすが凄腕機械鎧技師だからか、早速出した機械鎧を触り嬉々とした表情で直し甲斐があると話す。


「ドミニクさんのご兄弟で、あってますよね?
その、なぜこちらにいるのか聞きたくて…」


「お前さんは何故こちらにいる?」


「私は、ほんとにたまたまというかひずみ?に落ちたと言うか…」


機械鎧を触るのをやめたアイゼンが俺もだ、とポツリと呟いた。


「…参ったよ。気づいたら知らねェ土地にいて、言葉は通じるものの他の常識が通じねェときた。で、いろいろ説明してたら野蛮人扱いされてお縄ってわけだ。」


ズズッとお茶を啜るアイゼンに、めっちゃわかる!と相槌をうつ。


「まさかここに住んでるのは、政府…海軍側の人間ってことか?」


「そうだが?お前さん達は…確かに海軍には見えねェな。」


「あ…そうだよね、」


向こうの世界では軍の犬だったが、こっちでは追われる立場だった。
どうせバレることなので実は……と話し始める。



「ッハハ、軍の犬がこっちでは海賊とはねェ!」


「え!?なんで軍の犬って…!」


話もしてなければ銀時計すら見せていないのに何故わかったのか驚くと、入ってきたときの錬金術の精錬さを見ればわかるさ、と言われた。



「なんせ俺も一応齧ってた身でね」


「あ!そうですよね、この拠点!錬金術無しじゃ結構大変そうだなって…」


「まぁただ俺にはお前さんほどの実力はなくてな、軍には入れなかったが。それがずっと気に掛かって、ある日気づいたんだ。」


「気づいた?」


「錬金術を扱えない一般人でも錬金術が使えるような"モノ"が作れないかってな」


「「!!」」


さすが研究者というべきか、錬金術を使えないという原点があったからか、私にその考えはなかった。


「そっか…!すごい!」


今やアルのために錬金術という手を捨てたエドにも、使えるかもしれない。そう思うとその考えにたどり着いた彼を素直に尊敬した。



「いや、待て
つまりそれは"俺たち"にも使えるってことか?」


「!」


「ほう、察しがいいな兄ちゃん。
考えはあったが、結局向こうじゃ上手くいかなくてな。
こっちにきて、漸く成功したよ」


そう、一般人…つまりこちらの人間でも、そのモノさえあれば私達と同じように錬金術が扱える、そういうことになる

思い浮かぶのはエンヴィーが使用していた転送魔法陣、私が作るより早く使っていた
そして、エンヴィーが言っていた"お偉いさん"



「アイゼンさん、制作したモノは海軍に渡っているの?」


「そうだ。この技術を見込まれて、なんとか暮らしていけてる。それが俺の今の仕事でね。」


「ここで製作してどうやって海軍にまで渡すんだ?そこまで腕が立ちそうには見えねェが」



やることが増えそうだ、と思わず目を鋭くして話を聞いていく。



「ああ、それなら定期的に海軍の人が取りに来るんだよ。俺もここから出なくていいし、助かるが、海軍に見えないイカつい兄ちゃんでなァ。」


「…名前はわかるか?」


海軍の島で研究するシーザーに、アイゼンの製品を取りにくる海軍…きな臭さがプンプンである


「えーっと…たしか、

ヴェルゴっていったか…」


「"ヴェルゴ"だと…!?!」


「ロー…?誰なの?」


アイゼンの口から出てきた名前に汗が滲む様子のローを見て、相当ヤバいやつなのは理解できた。
ロー少し考えた素振りを見せたが、お前も知っといた方がいいか、と口を開いた。


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