錦水
「ったく、なんであたしが従者なんだよ…」
「おまん、まだそんな事言ってるぜよか?」
「あぁ゙!?」
水鳥がぶつくさ言っているのを錦が半ば呆れながら眺めていた。
「あったり前だろ!!姫と従者じゃそれこそ天と地の差だろーが!!」
「じ、従者の格好も似合ってるぜよ」
詰め寄る水鳥に対して錦は苦笑いしながら手で制すしかなかった。
「従者の格好が似合ってても嬉しくもなんともねーよ!!あたしだってどうせなら騎士とか姫が良かったぜ」
「…騎士はともかく水鳥も姫に憧れるぜよか?」
「…あたしが姫に憧れるのは変だってか?」
水鳥がジト目で錦を睨んだ。
「そ、そうは言ってないぜよ」
「フン、どうせあたしじゃ姫なんか似合わないっつーんだろ」
水鳥は半ばヤケになったのかスネながら言った。
(水鳥が姫様…)
錦は頭の中で水鳥の姫が着そうなドレス姿を思い浮かべてみた。
普段の素行から忘れがちだが水鳥の容姿はわりと整っているし、髪も意外と手入れをしているようでツヤもあり綺麗な方だ。
普段の水鳥では考えられないがもしドレスを着て大人しくしていれば…
「…わりと似合うと思うぜよ」
「はっ?」
「えっ?」
「「…………」」
二人の間に沈黙が流れた。
先に口を開いたのは錦だった。
「いやっ、これはちがっ…くはないけど思わず口がすべったというか…っ」
どうやら錦の言葉は無意識のうちに零れた言葉のようだった。
「な、な、な……」
二人はりんごの様に赤くなり、水鳥は金魚の様に口をパクパクさせていた。
「何言ってんだバカ錦ーっ!!」
「おわっ!!」
結果として照れに照れまくった水鳥が恥ずかしさのあまり錦に渾身の一撃をお見舞いする事で話は片付いた。
一方で――
「葵のお姫様、すっごい似合ってるよ!!」
「ありがとっ。天馬の騎士も格好いいよ!!」
(ジャンヌはやっぱり鎧よりドレスとかの方が似合うよなぁ…)
(お勝さんはドレスより白無垢かな…)
天馬と葵はお互いに手を握りながら誉めあい、霧野と神童はどこか遠くを見つめていた。
雷門は今日もリア充がいっぱいです。
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