蘭(ジャン)
ボールがゴールを目掛けて飛んでくる。
俺はゴール前に飛び出した。
「ミキシトランス…っジャンヌ!!」
身体が熱い。
焔が身体を焦がしているようだ。
それでも俺は叫ぶ。
「ラ・フラム!!」
あぁ、なんという因果だろうか。
彼女を死に追いやった焔でサッカーを守るとは。
出来ればこんな技使いたくない。
通常のミキシトランス状態の時でさえ彼女の面影を思い出してはその後の彼女の運命を恨んでは悲しんだ。
この技を使う時は更に悲しみが溢れて身体が裂けそうな痛みを伴った。
それでもこの技を使うのを止めないのは彼女と約束したからだ。
お互いに自分の出来る事で自分の大切なものを守ろうと。
何よりそんな事をしたら勇気を出し、後に英雄となった彼女に失礼だ。
だから俺は今日もこの技を使う。
彼女がくれたこの力で大切なものを守る為に。
それが今の俺が彼女に対して唯一出来る事。
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