円夏


*円堂さんがクロノストーンから戻った後

「ただいまーっ」
「ん…」
玄関のドアが開いたかと思うと大きな声が聞こえた。
いつの間に寝てたのだろう。円堂の声で目が覚めた。
「夏未ー、帰ったぞー!!あのな、今日……って、えぇ!?」
円堂は夏未の顔を見るなりビックリして固まってしまった。
「円堂くん…どうしたの、そんな大声出して…」
夏未は半ボケの状態で円堂を迎えた。
「いやどうしたはこっちの台詞だよ。なんで夏未泣いてんだ?」
「え…」
円堂が夏未の涙を拭いながら聞いた。
「あ、あら?おかしいわね」
夏未も無意識だったらしい。
拭っても拭っても涙は止まらなかった。
「寝てたみたいだし…怖い夢でも見たのか?」
「そう…みたい」
そう言うと夏未は円堂に抱き着いた。
「うぇぇ!?どうしたんだ!?そんなに怖い夢だったのか!?」
夏未から抱き着いてくるなんて珍しい。
円堂は真っ赤になりながら聞いた。
「……円堂くんがまたいなくなる夢をみたの。…あまり思い出したくないけど。」
「!!」
肩に顔を埋めていたせいで声はぐもっていたが円堂の耳にはしっかり届いた。
「無茶するな、とは言わないわ。言っても無茶するのが円堂くんだもの。でももう…勝手に一人でいなくならないで。」
「……ごめん」
夏未の肩は震えていた。
これも共鳴現象の一つなのだろうか。おそらく俺が死んだとされた時の夏未の記憶を夢という形で共有してしまったのだろう。
どの俺も夏未を悲しませてばっかりだ。

でももう終わったんだ。

「夏未。」
「…なに」
「これからはずっと夏未の傍にいるからな!!」
「!!…っ破ったら承知しないんだから!!」

やっと久々に夏未の笑顔が見れた。


玄関前にて。
「し、神童先輩…」
「…なんだ」
「ここで入ったら俺達カンペキお邪魔虫ですよね…」
「だな…」
「たっくよー、監督だぜ、俺達呼んだの。なのに俺達ほっぽって奥さんとイチャつくなんて勘弁してくれよ」
「か、狩谷くん…」
「どうしよ剣城〜」
「俺に泣きつくな!!」
「だって〜」
「はぁ…しょうがない。監督にメール入れて帰るか」
「え、帰るんですか?」
「お前ら…あの中に入っていく勇気があるのか?」
「「「ありません」」」

こうして雷門イレブンは空気をよんで自分の家へと帰っていった。

- 166 -
[prev] | [next]


back
TOP

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -