お弁当(半まこ)


「半田さん…いつも思うんですけど半田さんって自炊出来るんですか?」
「え?」

本日絶好のサッカー日和となった日曜日の河川敷では稲妻KFCが練習をしていた。
今はお昼休憩である。
いつもの様にワイワイと喋っている子供達を見ながら半田とまこは並んで座って食べているとまこが半田のご飯を見ながら唐突に言った。

「失礼な奴だな。俺だって自炊ぐらい出来るっての」
「じゃあなんでいつも日曜日コンビニ弁当なんですか!!」
「う…」
少しムッとした表情で半田は言ったがまこの言い分には反論出来なかった。

まこも最初のうちは半田さんも忙しいのかな、などと思っていたがこう毎週となるといくらなんでも酷すぎる。
ついにまこは半田のご飯について言及することに決めた。

まこが半田の方へ身を乗り出して強気な口調で言った。
「いいですか!!監督ともあろう人が毎回コンビニ弁当でどうするんですか!!そんなんじゃ子供達に悪影響ですよ!!」
「で、でもさ、これでも平日はちゃんと自炊してるんだぜ?だから日曜ぐらいいーかなーって…」
半田がまこの勢いに押されつつも苦笑いを浮かべながら弱く反論した。
「…じゃあその自炊っていつも何食べてるんですか?」
まこは半田の反論を聞いても勢いを弱める事はなかった。
半田が自炊しているという事もまこには半信半疑だった。
「え、えーと、いつもはパンと…主に冷凍食品や生野菜丸かじりとか?」
半田は目を反らし、冷や汗をたらしながら答えた。
「そんなの自炊とはいいません!!」
「ハイごめんなさい」
半田は思わず謝った。
包丁もろくに使わず使うのは主に電子レンジだけというのが自炊というならば世の中のお母さんは一体何なのだろうか。
まこが怒鳴るのも当然だった。
「けどさ〜一人暮らしのサラリーマンて結構大変なんだぜ?あんまり飯の事なんか考えてる余裕ないっていうか…」
それでも弱々しい表情で言う半田にまこは大きくため息を吐くと言った。
「はぁ…わかりました。これから日曜日の練習には私が半田さんの分までお弁当作ってきます」
「は?」
「だから!!せめて日曜ぐらいは私が栄養があるものを作ってくると言ってるんです!!」
まこがそう言い切った後一瞬の間ができた。

「…えぇっ!?お前料理出来たのか!?」
「ちょっ…開口一番に言う事がそれですか!!しかも半田さん、そのセリフ凄く失礼ですよ!!」
「わ、悪い…」
半田は大袈裟な程驚いていた。
まこはもう一度大きなため息を吐くと言った。
「はぁ…半田さん、私だってもう大学生ですよ?自炊ぐらい出来ます。このお弁当だって自分でやったんですからね」
「へ?まこお前それ自分で作ってたのか?」
半田が呆気にとられた様にまこのお弁当を指差した。
まこのお弁当は卵焼きやウインナーなど可愛らしくもありながら栄養満点のお弁当だった。
「半田さん馬鹿にしてるんですか?私だってこんぐらい出来ます。それより半田さん、そんな食生活だといつか体壊しますよ」
「面目ない…」
まこがジト目で睨みをきかすと半田がしょんぼりとした顔で項垂れた。
そんな半田をまこはちょっと可愛いかも、と思い吹き出してしまった。が、
「それじゃ来週、期待してて下さいね。でも、半田さん自身も少しは料理覚えなきゃダメですよ」
と言うとまこはいたずらっ子の様に半田の顔を覗き込みながらウインクをした。
半田は一緒驚いた顔をしたがすぐに眉を下げて笑った。
「あぁ、肝に銘じとくよ。来週、楽しみにしてるからな!!」
ポン、とまこの頭に手を置くと食べ終わった半田は子供達の方へ近寄っていった。

「…子供扱いして…」
まこは半田に触られたとこに触れると頬を染めた。
まこは半田のあの表情に弱いのだった。


次の日曜日、まこ約束通り半田の分までお弁当を作ってきた。
「ど、どうですか…?」
お昼休憩になり、ちょうど今半田に食べてもらっている所だ。
前回あれだけ言ってたにも関わらずまこは少し不安そうだった。

(味付けとか大丈夫かな…)

そう思ってまこが声を掛けても半田はガツガツと食べるだけだった。
すると半田は急にまこの方を向いた。
「まこ!!」
「は、はい!?」
半田が少し珍しい程真剣な顔つき+かなりの至近距離で話しかけてきたので思わずまこの声が緊張で裏返った。
が、そんなまこなどお構い無しに半田は急にニカッと笑いかけた。
「お前料理上手いな!!すっげー旨い!!」
そう言うと半田はまこの頭をガシガシと撫で回した。
仄かに好意を寄せてる相手に頭を撫でられたまこはさっきの半田との至近距離の事なども含めて顔に急激に熱が集まるのが分かった。
「そ、それは良かったです…」
まこは今にも頭から湯気が出そうだった。
「いやー、ホントに旨いよ。将来まこはいいお嫁さんになれるな!!」
「およっ…!!」
特に何も考えずに言った言葉だろうがまこにとっては既に爆発寸前だった。
「監督ー!!!」
「おー、そんじゃまこ、ご馳走さまでした」
丁寧にお礼を言うと半田はどうしたー?、と呼ばれた方へ行ってしまった。

「〜〜っあの人タチ悪すぎ!!」
一人未だに熱を伴っているまこを残して。

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