その名はあまりにも神聖で
ルーク・フォン・ファブレ。古代イスパニア語で聖なる焔。愛しき名前を抱きしめ少年は眠る。
愛しき人の名前。愛しき自分の名前。其れを持つことは彼にとって胸を締め付けるよりも苦しく、甘く、酷く歓喜する事であった。
―俺が持つなんて思ってもみなかった。
順序としては気が付いた方が遅いのであるが、彼の名前を奪うことになっていたとは思わなかった。当たり前として自分の個を決める名であると認識していた。
Who am I?―俺は誰?―
貴方は誰と聞かれて答えられる人物は数少ない。名前を答える者が大半だ。
個を識別する為の大半を担っている物が名というもの。
『いらないないって言うなら貰っちまえ』
そうガイが言うけれども受け取ってしまってはいけないような気がしていた。俺は彼のレプリカでしかないのだから。
が、次第にルークの中でその名が芽を出した。ルークという名の響きに、はにかんだ笑みを浮かべた。
神聖すぎる名である“ルーク”。大好きな彼の名だったもの。其れは彼からのプレゼントにも感じられた。
2006.12.8
御題元「群青三メートル手前」