(愛してる!)念じて終わり



 宿に泊まっていたルーク達であったが、男女の人数から二人部屋を宿屋からあてがわれてしまうと、人数に余りが生じる。
 一人、部屋でルークはベッドで横たわっていた。常に一緒にいるミュウも今回はティアが一人部屋となった為に連れて行かれてしまったからだ。
 いると五月蠅いとも思うのだが、いなければいないで落ち着かない。静かすぎる。
 そんな気まずさを打開すべくルークは勢いよく足を振り子のようにし起きあがった。何も変わらないが、少しだけ部屋の中を見渡した。壁に掛けられていた鏡がきらりと夕日を反射して光る。
 視界にその光を直接受けてしまい、ルークは目を細め、反射的に手を顔の前へと持っていく。
 鏡に映った姿はアッシュと酷似していた。利き手である左手は鏡の作用により右手となり映し出される。光を受け、思わず眉間にシワを寄せた為に元々似ていた顔がよりアッシュへと近づいた。
 自分で作り出した表情だというのに、それは一瞬で終わる。たまたま目に入った物だった。
 ―アッシュ。今どうしてるんだろう。
 ふと手のひらを見つめ、そしてそのまま自身を抱きしめた。肩から肘にかけて数度手を往復させ、彼の事を思い浮かべた。
 一度でも言ってしまえば楽になれるのに…。とも思うのだが、何と言えばよいのだろうか。この感情は?この思いは?
 言えるわけがない。言葉で伝えられるはずもない。溢れんばかりのアッシュへの思いがルークを構成する。
 好きだとか、大切なんだとか、一緒にいたいだとか、愛してるとか、この感情に名前をつけるとしたら、何が当てはまるのだろうか。家族愛?兄弟愛?オリジナルとそのレプリカだから?それとも男女間の恋愛と同じように?
 ルークの中で生まれたこの思いはただただ大きくなっていくばかりで形を形成しない。
 ―愛してる!
 俺からも回線が開ければいいのに…。念じるだけで全ての感情を伝えられる便利通信路を開けないかとルークはうんうんうなり声をあげ試みた。



prevtopnext


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -