来世でもよろしくね
「こら、スレイ。また居眠りですか?」
教科書を盾にしてばれないとでも思ったのだろうか。すやすやと眠るスレイの頭を小突く。いでっ、と可愛げもない声を上げて目覚めた彼に向けて、ふぅ、とため息。
「僕は前によろしくとお願いされたので、あなたがこのままならお望みどおりよろしくして差し上げますが……」 「ごめんって先生!宿題だけは増さないで!」 「先生にタメ口は駄目ですよ?宿題も増し×2(かけに)です。居眠りなんてするからですよ」
えー、と文句を言う彼にプリントを差し出して、僕は小さく笑う。学校にいる間は先生と生徒なのだ、普段どおりタメ口をされては困りもの。彼にだけ甘くするつもりは到底ないので、授業開始直後から夢の世界に旅立っていた彼にはお土産をあげなくてはならない。
「僕の絵しかないこのプリント、空欄を全部埋めて明日持ってきてくださいね」
画伯と呼ばれた自分の絵、きっと大変だろうなぁと思いながらも罰は罰。あからさまに肩を落としたスレイを尻目に、あと10分となった授業を再開する。彼のことだ、ミクリオやアリーシャ、ロゼ、エドナ……彼らや他の友人たちにも頼み込んで何とか埋めて持ってくるのは分かっている。なんだかんだで大勢に好かれる彼を見るのは、少しだけ胸が痛かった。
――来世でもよろしくな、おなまえ。
いつだったか僕が死ぬその際に、彼は確かにそう言った。
――ええ、是非。今度はもっと、近しい関係だといいですね。例えば僕が先生で、スレイたちが教え子のような……。
なんて、僕は死に際にも冗談を言っていた。馬鹿なのだろうな、と思う。だが案外冗談というのは馬鹿には出来ない。現に今、そうなのだから。
(今世でも、末永く僕のことをよろしくお願いしますね、スレイ)
---------- お題:診断メーカー(140文字で書くお題ったー)より『来世でもよろしく』
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