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 Sorey



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ベッドに腰掛けて、ひたすら本を読んでいるのは、スレイ。ぺらりとページを捲ろうとした瞬間、彼の目の前に花柄の小さな器に入った白い物体が差し出される。

「ソフト……クリーム?」

白い物体にピントが合うと、それは見慣れたソフトクリーム。それから目線を器に、腕に、顔に移していくと、白いエプロンを腰に巻いたおなまえと目が合った。早く受け取れと言わんばかりに、器をスレイの顔の前に突き出している。
鼻先でふわ、と漂う濃厚なソフトクリームの香りで、スレイは頬が緩むのを感じた。

「オレが一番好きなおやつなんだ。知ってたんだね、ありがとう」

受け取りながらそう素直に礼を言ったのに、おなまえはただツンと顔を背けて、思い上がらないでくださいよ。とだけ言った。その頬はうっすらと赤みが差していて、わざわざ好物を調べてくれたんだろうという事がわかる。本を読み出すと止まらない癖についてはミクリオにも言われていたし、ミクリオもまたこうしてソフトクリームやアイスキャンディを持ってきてくれていた。きっと聞いたのだろう、大声で呼んでも全く聞こえてないスレイでも、ソフトクリームくらいなら差し出せば食べるから、と。一口食べれば、口の中で濃厚な甘みが広がる。
昼から伸び以外の動きを一切せずに読み通していたものだから、こうしてほかに気が向くと、一気に空腹感や疲労感が押し寄せてくる。そんなときに甘いもの、しかも大好物ときた。手を止めているのがもどかしくなり、さらに一口、二口と食べ進めていく。すると、普段食べなれている味とは違い、どことなく甘さが強く、それでいてさっと融けていくような。
料理は人柄を表すとも言うが、ならば目の前でチラチラと伺い見るようにしているこの人物も、ソフトクリームのように甘い人物なのだろうなぁと笑みを見せるスレイに、そんな心のうちなど知らないおなまえは、ただ訝しげに顔をしかめるのであった。


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お題:診断メーカー(【お題】セリフで場面をつくってみたー)より『思いあがるな』を入れた「甘い場面」

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「おなまえはそのままでいいよ。飾らないほうがずっと綺麗だ」

まじまじと見つめられ、言葉も相まってとても気恥ずかしい。どこでそんな台詞を覚えてくるのだこの導師は、と思う。スレイは無意識で天然なのだ、と自分に何度も言い聞かせないと、とてもじゃないがやっていけそうにない。ああ、今日も心臓に悪い一日だった。

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お題:診断メーカー(140文字で書くお題ったー)より「よくもそんな恥ずかしい台詞を」


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「別にスレイの作るシフォンケーキだけが好きなわけではないですからね!」
「別におなまえの作るストロベリーワッフルだけが好きなわけじゃないからな!」

一瞬だけかち合った視線のあと、二人は声をそろえて言う。そう、珍しく二人は喧嘩していた。喧嘩、と言っても子供がやるようなものだ。デゼルの作ったストロベリーワッフルがとても好評で、スレイが手放しで褒めたこと。ライラの作ったシフォンケーキが前代未聞の仕上がりを見せ、頬が落ちるほど美味しいとおなまえが褒めたこと。発端はそれだけだった。互いの互いに好きな互いのおやつ。他意はなくただ仲間のおやつを褒めただけだったのだが、それが心に少しだけもやを生んだ。
この時点で周りはニヤニヤしているかため息をついているか、はたまた青春ですわ!と舞い踊るのかのどれかだ。腕を組んで勢いよく顔をそらした両者は、時間がたつにつれチラチラと相手を盗み見るように視線を動かし、そしてまたも、二人の視線が合わさる。

「嘘です!スレイのもっちりふわふわなシフォンケーキがいいんです!」
「嘘だって!俺もおなまえのさくっとしてるのにやわらかいワッフルが一番だから!」

そしてまた声が重なる。結局はたった数分で仲直りしてしまうものだから、初めこそ喧嘩に心配していた仲間たちもああいう反応で落ち着いてしまう。

「あのバカップルめ」

分かっていてもそう呟かずにはいられない。得物を研ぎながら、ロゼはひっそりとため息をついた。


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お題:診断メーカー(801CPお題(甘イチャ編)やってみたー)より「君の手料理が食べたい」


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 Attention↓
















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雨が降る。雨を気にしたのは久方振りだ。その雨で今日は人の入りが少ない。店を閉め、傘をさし街へと出る。降りしきる雨が、石造りの街を仄かに白に染めていた。どこか懐かしい気分を胸に覚えながら、たどり着いたのは聖堂。普段は器の水のそばにいる彼も、聖堂の外に出て、雨をただ眺めていた。

「ウーノ」

蒼海色の髪を揺らして彼はこちらを向く。レディレイクに店を構えて以来、彼とは色々話す仲であった。

「おなまえか」

彼は再び空を見上げ、ぽつりと呟く。ひどく懐かしい雨だ、と。きっとどう見てもただの雨だろう。だが何となく、何となくだが懐かしいのだ。春の目覚めのような、雨。

「世界がようやく起きたのかもしれませんね」

長い冬から目覚めを渇望するそれは希望。雨が降り、草木が芽吹き、いずれ訪れる日差しの元に花を咲かす。

「行かなくてもいいのか」
「ええ。きっと今頃、一番大事な家族に会いに行っている頃でしょうから」

雨が上がった空。その優しく暖かい日差しは、僕のこともいつか、照らしてくれるだろうか。


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