「苗字さん!!お怪我は大事ありませんか?」

「さ、西園寺さん?」


教室につくとクラスメートの視線が刺さった。背中を日吉がそっと押し教室に入れる。大丈夫だと言うように。入ってすぐ、ガバっと音がつくほど強く抱き付かれた。抱き付いたのはクラス委員の西園寺さん。

西園寺さんは少し泣いているようで私はびっくりして日吉を見た。ボリボリと眉間に皺を寄せて何かを話そうとした時、西園寺さんが私から離れて話し始めた。


「聞きましたよ。苗字さんが中谷先輩にドリンクをかけたという話。すぐに嘘だとわかりました。あなたをきちんと見ている人間ならみんな、それに気づいたはずです。」

「西園寺さん…」

「安心してくださいな。私たちは皆苗字さんの味方です。」

「味方…?」

「はい。私たちだけではありません。この第二学年の者は皆あなたを信じています。」


クラスを見回すと皆がうなずいた。西園寺さんが私の手を静かに握ってくれる。暖かくてうれしかったけど、信じてくれて嬉しいけど、でもやっぱり先輩達は私の事を信じてはくれてないという現実が浮き彫りになったような気がして少しだけ悲しくもなった。


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