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「何なんだよ鳳!!」
日吉が俺に噛みつく。部室から離れたところで解放してやると胸倉を掴んできた。樺地が止めようと日吉に制止をかけるが意味はなかった。
「苗字を一人にしてていいのかよ!!」
「今は一人にさせてあげないといけないだろ」
「何で…!!」
「あの子は俺達がいる前では絶対に泣けないからだよ!!!!」
元々名前ちゃんは人前では絶対に泣かない。幼い頃から馴染みのある俺達でさえ彼女が泣くところを見たことがほとんどないんだ。一人でひっそりと泣くんだ、あの子は。自分が泣くと俺達が何もかもを放り出して自分の側にいることを選ぶと知っているから。
「自分が泣く事が迷惑だって勘違いしてるんだよ名前ちゃんは!!」
そうさせたのは俺達だけれど。思い当たる節がちゃんとあるのだろう。日吉は舌打ちをして俯いた。
「じゃあ俺達はどうしたらいい。側にいることさえも出来なくて何をすればいいんだよ…っ」
「俺達は中谷先輩が名前ちゃんを嵌めた事を知ってる。この感じだと多分もう三年の先輩はほとんど使えない。俺達だけでどうにかするしかないよ。」
「どうにかって、俺達だけで何が出来るっていうんだ!!」
「何コソコソやってんだよ、鳳、日吉、樺地」
日吉の言葉に口を閉ざしかけた時後ろから同輩たちの声がした。目線をそっちにやると二年が全員いつの間にか集まっていた。準レギュラーの二年を束ねる奴が代表して口を開く。
「何きょとんとしてんだ。俺達も仲間に入れろよ。俺達の耳にもその話入ったけど苗字がやってない事くらいお前らより付き合い短い俺だってわかったぜ」
「…良いのか、お前らだってやられるぞ。あの人たちがそういう事に関して情けがないことは苗字を見てわかってるだろ。女子一人を袋叩きにしたんだぞ」
「んなことわかってるよ。だからこそお前らだけじゃなくて俺らにも頼ってくれって言いに来たんだ。貴重な女友達をあんなにされて黙っていられる男じゃねえよ。」
全員が口々に言う。名前ちゃんを助けたい旨を。これだけの人数がいればもしかしたらどうにかなるかもしれない。俺達は作戦会議を開くことになった。
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