長太郎に支えられながらもう一度体を寝かせる。ジャージを握りしめる私の手は長太郎の大きな手でそっと包まれた。


「夢じゃ、なかったんだね」

「あぁ…大体話はわかってる。樺地から聞いた。」

「名前ちゃん、中谷先輩と何かあったの?喧嘩って感じじゃないみたいだね」

「……………私、先輩の事傷つけてたんだ知らないうちに。この関係を終わらせましょうって言われた。」

「関係を終わらせる?なんだそれ、どういうことだ」



そんな事私が聞きたい。どれだけ記憶を遡っても原因が見つからない。これだけの事を先輩がしたのなら、最初から私を孤立させることが先輩の目的なのだとしたら、きっとその怒りは相当なものなのだろう。

私はそれだけの事を知らず知らずにやっていたのだ。


「今日はもう帰ろう名前ちゃん。日吉が送っていくから。ね、日吉」

「あぁ。荷物準備しろ苗字。あと着替えも…」

「ううん、いい。」

「……………………俺じゃ不満か」

「違うよ、そうじゃなくて。もう大丈夫だから部活やる」

「馬鹿苗字。その体でどうやってやるつもりだ。痛いんだろ」

「痛くない、もう大丈夫。すぐ行くから出てって」

「苗字」

「日吉、もう行こう」

「何でだよ鳳!!」

「ありがとチョタ」

「無理はしないでね」



長太郎が納得行かずに喚く日吉を連れ出した。流石幼馴染だ。察しがいい。靴の泥で汚れたジャージとTシャツを脱いで替えのものを取り出す。ふと部室についている鏡に映った自分を見たら綺麗に包帯やらガーゼやらが巻いてあった。

あぁ、この綺麗さは長太郎と樺地だね。日吉は昔からぶきっちょだからこういう事には全く向かない。あの二人は正反対に女の私よりも幾分か手先が器用である。余談だが、私と日吉の家庭科の課題は大体この二人が作っている。



「痛っ…」


肩をあげると痛みが走った。

脱いだ泥だらけのTシャツに顔を埋めて外に嗚咽が漏れないように泣いた。あぁ、顔を洗わないといけない。土の匂いがさらに涙を誘った。



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