鳳と樺地はかなり器用なものでシップもガーゼも包帯も綺麗に苗字の体に纏われていく。その点俺はそういうことに関してからっきしなのでぐちゃぐちゃで不恰好だ。
自然と眉間にしわが寄り、その雰囲気を察知した鳳がすかさず俺がやるよ、と申し出ては俺がまた違うところをぐちゃぐちゃにして、のやり取りをさっきから繰り返している。そのうち破門にされたのは言うまでもない。


「悪いな、結局お前らだけにやらせた…」

「うん、君がいない方が捗った。」

「ウス」

「…………………そんな事より、さっきの樺地の話が本当なら俺と鳳の推測はまるまる当たっちまったってことだな」


何も言えるわけがない、謝罪を無言でもう一度して本題に移ることにした。
俺と鳳は部室の状況からみて、苗字を暴行したのはレギュラーの先輩達でそこまでのシナリオを書いたのはもう一人のマネージャー、中谷紗江。

どうやってここまでやらせるほど先輩達を誘導したのかは知らないが、何より腹立たしいのは中谷紗江より付き合いが長いはずの苗字を裏切ってこんな事をするあいつらだ。

樺地の話では、頭からドリンクを苗字にかけられたらしいが


「あいつがそんな事するわけないだろ」

「同感だね。今回の話は俺たちでも嘘だってすぐわかるよ。中谷先輩をテニス部から追い出したいと本当に名前ちゃんが思っていたのなら日吉がすぐ気付くはずだし。」

「おい、何で俺だ」

「君がいつも名前ちゃんを凝視してるからだよ」

「してねえよ。それよりこれからどうするつもりだ。苗字と中谷先輩がこんな状態じゃ部活もクソもない」

「俺たちだけでも側にいたいね。たとえ先輩達を敵に回しても。」

「ウス」

「良いのか、樺地。お前跡部さんどうすんだよ。鳳も、宍戸さんは」

「……知らない」

「知らないって樺地お前」

「今の跡部さんは…嫌いです」

「今の跡部さん聞いたら失神するぞ」


それはそれで少し見たい気もするが。


「……ん、ひよし…」

「…苗字!!」

「……、みんなどうしたの?」

「そらこっちの台詞だ馬鹿野郎」

「馬鹿ってひど………ッ」

「まだ動いちゃだめだよ」


目を覚ました苗字が体を起こそうとするのを鳳が制してベッドに寝かせる。一瞬訳がわからないという顔をしたが、状況を察知したらしい。顔が悲しそうにゆがんだ。




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