繰り返し


「好きだ」

『私は嫌いだ』



彼は一之瀬一哉
多分私が関わってきた人達の中で、一番面倒な人間だ。

何でって、冒頭の台詞からして面倒でしょ?
毎日毎日飽きもせず私に好きだって言ってくる。

彼は転校生だ。
つい一週間前の事のハズなんだけど、もう一ヶ月くらい一緒に居るように感じる。


私は一之瀬君と席が隣だ。
そしてご丁寧に机が隣とぴったりくっついている。


小学校かよ


そんなことより、いやはや困った
彼は一生のうちに会うか会わないかの問題児だ。


そして問題児…もとい、一之瀬君が私の名前を呼ぶ。

私は彼に名字で呼ばれたことがほとんどない。
一回だけ。

そう、たった一回。



転校初日、私の隣の席に着いた一之瀬君はよろしく、と人懐っこい笑顔で挨拶してきた。
ここまでは良かったんだよ。

ここまでは


その後、彼は…



《苗字さん…だよね》

《うん、苗字名前です
よろしくね、一之瀬君》

《………じゃぁ、名前って呼ぶね》


《…………(←抵抗)何で》

《俺、君に一目惚れしちゃった☆》


《(さすが、アメリカ…クオリティハンパねぇな…)》











それからだ
一之瀬君が私に好き好きいってくるようになったのは。


『(疲)』

「何て顔してんのさ、名前
そんな顔もストライクゾーンだけどね」


『君のストライクゾーンは広すぎる』


「あっ、もしかして俺の事考えてた?」




『あぁ〜、そうかもね』


間違ってないか、一之瀬君は問題児だって考えてたし。

嘘は言ってない


「ホント、名前には適わないなぁ」

『何もしてないんだけど』


「名前、好きだよ」

『…はいはい』


いつも通りに受け流すと、一之瀬君は急に黙った。

どうしたんだろう…
いや、別に心配なわけじゃないけどさ



「名前は、どうやったら俺に振り向いてくれる?」

『はぃ?』


「俺は本気で名前のことが好きなんだよ。
だから、いろんな俺を見て欲しいし感じて欲しい。それにいろんな名前を見たいし感じたい

もしかして、名前は俺の事嫌い?」


『嫌いって、別にそういうわけじゃないけど…』

「じゃぁ、他に好きな奴でもいるの?」


『いないけど…』



今日の一之瀬君はなんか変だ。
いや、いつも変だけど
今日はいつも以上に…



「……俺の事、好きになってよ」

『……そんなこと言われても

大体、あたし一之瀬君のこと何も知らないよ
知り合ったばっかりでしょ?』


「そっか、確かにそうだな…

じゃぁ名前!!!こうしようよ!!!」


『何?』

「俺、一週間ずっと名前に好きだって言い続ける。
だから、名前も…」

『好きなんて言わないよ』

「え〜」



言わせるつもりだったのか
油断できないなホントに


「じゃぁさ!!
せめて名前で呼んでよ!!」

『名前?
……………一哉?』

「うん!!じゃ、俺の猛烈アタック期待しててよ!!!
じゃぁね、名前!!大好き!!!」




名前呼んだだけなのに、嬉しそう…


てか、どうしよう…
今ここに不覚にもときめいている自分が居る。




不味いな…
これじゃ、一週間どころか……












明日にでも好きになれちゃうよ…

































《おはよう名前!!大好きだよ》
《おはよう一哉………あ、りがと》
《…!!もう、ホント名前には適わないよ!!!》








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