君の好きなとこ
私の彼氏である幸次郎は基本、誰にでも優しい。
それは人間としてとても誇れる事だし、すごい事なんだけど、恋人である私からすればあまり良い気持ちのするものじゃない。
「あ、源田君」
「高崎か、何だ?」
幸次郎に話しかけたのはクラス1…いいや学年1可愛い(そしてモテる)と噂(もうすでに噂ではなく一般常識化してる所もあるが…)される高崎さん。
女子の私から見ても本当に可愛い。
「あ…、ここじゃ話しにくいからあっちで…」
幸次郎は高崎さんについて教室を出て行った。
私が幸次郎の事を優しいと思う時は、前の女子が落とした消しゴムを拾ってあげるとか、幸次郎目当てでシャーペンを借りにきた女子に律儀に貸してあげるところ。
さっきみたいに、相手の出した条件に自分のできる範囲で律儀に答える所。
幸次郎は高崎さんと何を話してるんだろ…
やっぱり告白かな…
高崎さん可愛いから付き合っちゃうかもね。
でも、まぁいっか。
私には幸次郎の好き嫌いを決める権利なんてないしね。
「名前」
『…何?』
幸次郎はいつの間にか教室に帰ってきていた。
名前を呼ばれたから振り向くと、太陽みたいなスマイルが何故か不思議そうな顔に変わった。
「何か冷たくないか?」
『は?そんなことないよ。
あ、そうだ幸次郎。』
「何だ?」
『次の授業サボるから先生に言っといて。』
「名前!!」
幸次郎の制止の声も無視して私は教室から出た。
行き先は屋上にしようか。
何でだろう。
何かむしゃくしゃする。
屋上にあるタンクの上に大の字になる。
柔らかい風と、ゆったり動く雲。
校庭から聞こえる体育の授業の声がなんとも心地の良い騒がしさ。
と、そこに響いた轟音。
屋上の扉を開けた音だった。
そして扉を開けた人物は、
『幸次郎…』
「そっち、行って良いか?」
幸次郎ははしごを上り、あっという間にこっちへ来た。
私は起き上がって幸次郎を見る。
『何か用?』
「名前に会いに来た」
『先生に言っといてって頼んだはずだけど』
「言ってから来た」
馬鹿。
何でそんな優しいのさ
『あっそ…』
自分でも思う。
何て素っ気ない返事なんだって…
何に腹を立てているのかわからないまま幸次郎に当たる自分に腹が立つ。
「なぁ名前」
『ちょ、ま…』
名前を呼ばれたかと思ったらいきなり幸次郎に後ろから抱きつかれる。
ちょっとした抵抗なんて幸次郎には痛くも痒くもない訳で、私はすぐに抵抗をやめた。
「何怒ってんだよ」
『怒ってない』
「怒ってるだろ」
『………///』
「高崎の告白、断ってきた」
『は?』
「嫉妬してたろ。
それから俺が高崎と付き合うんじゃないかって不安だったろ」
『な、何言って…!!』
あ、そうか…
さっきからイライラしてたのはこれが原因だったのか…
嫉妬なんて…してたのか、私…
「俺、名前以外と付き合う気ないんだ。
名前以外の女子って、何かパッとしないっつーか…同じ顔に見えるっつーか…
わかるか?」
『…………わかんないわよ…っ』
なんだか恥ずかしくなって地面を見た。
私の肩に顎を乗っけて更に体を近づけてくる幸次郎に、私もくっついた。
「何が嫌だった?」
『…幸次郎が、誰にでも優しい所』
「うん、それから?」
『いろんな女の子に告白されちゃう位格好良い所』
「………それはなぁ(苦笑)」
『幸次郎が好きで好きでしょうがない事』
「ははっ、サンキュ」
『馬鹿にしてる?』
「違う。嬉しいんだよ
俺も名前が好きで好きでしょうがない。」
『…ばか』
私だって大好きだ。
心地の良い騒がしさと、背中に感じる幸次郎の体温に私は幸せを体中で感じていた。
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明日香様リクの源田でした。
遅くなって申し訳ありません(汗)
では、リクエストくださった明日香様、ありがとうございました!!
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