肯定は逆らえず



私の頭上に広がるのは青い空。薄く綿のように広がる白い雲。
なんて身近な絶景だろう。


「やっぱりここにいた」


そんな絶景にニッコリ笑顔の銀色が入ってきた。
あぁ、これもこれでとても綺麗だ。


『授業ならまだ後十分あるけど』

「授業一分も出てない名前には言われたくないなぁ」

『何しに来たの、優等生の鳳君』

「俺は優等生なんかじゃないよ」


そう言って長太郎は笑い、私の横に寝転がった。
長太郎は私の幼馴染だ。幼稚園からずっとのお付き合いだ。そんな長太郎は彼女の一人でも作ればいいものを、今でも私のお世話をしている。

優等生の長太郎とは対照的に、マイペースな私はこうしてしょっちゅう授業を抜け出しては屋上に来ていた。
そんな時、迎えに来てくれるのはいつも長太郎。

心の奥底ではこのお迎えを密かに待っていたりする。


「名前は昔からこうだね」

『おちこぼれって事?』

「違うよ。こうして自分の好きな事を好きなときにするっていう本能に忠実な所ね」

『何それ。協調性がないって事じゃない』

「自虐ネタなんてらしくもない」


長太郎はいつもこういう。昔からこうだね、名前らしいねって。
そりゃ、幼稚園からのお付き合いなら私の全てを知っていてもおかしくはないのだけど。


『昔は泣き虫だったのになー』

「だからこそ俺は名前に憧れたんだよ」

『…何ソレ』

「いつも泣いていた俺を見捨てないで側にいてくれて、いつも守ってくれて。いつだって格好良い俺のヒーローだった。」


いきなり語りだした長太郎をチャカそうと思って体を起こし、長太郎の顔を見る。
だけどその顔を見て私は何も言えなくなってしまった。

何、その真剣な顔。


「昔からこうだ、とか名前らしいね、とか何で言ってるかわかる?」

『ちょた…?』

「どうして俺がこうしてずっと名前の側にいるか、どうして彼女作らないのかわかる?」


うろたえる私に長太郎が体を起こして近づいてくる。いつの間にか私より身長が高くなってて、いつのまにか声が変わってて、いつの間にかどんどん大人になっていく私の幼馴染。


「名前の事が好きだからだよ」

『は…冗談』

「冗談じゃない。俺は随分前から名前が好きだった。最初は格好いいって憧れだった。でも今は違う。今度は俺が名前を守りたい、頼って欲しい。
他の奴とは違う、俺は昔から名前を知ってる。名前の側にいる。

見せ付けたかったんだ、他の人達に。俺と名前の間にお前らなんか入れないからなって。」

『長太郎?』

「返事は?」


またあの真剣な目をされた。

困って明日でいい?と聞こうとした所で長太郎はニヤリと笑って私とのキョリを近づけて言った。


「聞くまでもないよね?」
















肯定は逆らえず















《あと俺、優等生じゃないからね》
《それこそ冗談だよ》
《優等生は幼馴染とのエロエロな妄想四六時中するの?》
《その言葉を女子が聞いたらドン引きだろうね》


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リクエスト下さったみかん様ありがとうございました。

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