ほんのり赤いりんごがふたつ


「ご、ごめん越前君」

「いや、別に…」


さっきから私は越前君の足を踏んだり、越前君にぶつかったりと迷惑をかけっぱなしだ。
付き合って初めてのデートだからと、新しい靴で来たのがいけなかった。歩きにくくて仕方がない。


「ふらふらしてるけど大丈夫なの?」

「うん。大丈夫、なんでもないから。」

「…喫茶店でも入る?」

「あ、うん…」


近くにあった喫茶店に入ると、靴の音が一層大きく響いた。二人席に向かい合わせで座り、私はアイスティーとケーキを、越前君はカフェオレとチョコレートムースを頼んだ。


「甘いもの好きなんだ、意外。かわいいね、越前君」

「かわいいって…嬉しくないんだけど」

「ごめんごめん」

「謝ってないでしょ」

「そんな事ないよ」

「そんな事ある」


むくれてそっぽを向いてしまった越前君に私は苦笑する。かわいいなって思ったけど言うとまた怒るから心の中に閉まっておこう。
しばらくして頼んだものがくると、私達は黙々と食べた。


「次、どうする」

「越前君は行きたい所ある?」

「別にないけど。それより先輩歩けるの?」

「え、どういう…」

「だってさっきからふらふらしてんじゃん。気分悪いんじゃないの?」

「いや、気分は大丈夫なの。ただ足が…」

「足?」

「履き慣れてない靴履いてきちゃって…」

「あぁ、成る程。だからか」

「ごめんなさい…」

「別に。先輩が俺に触りたくてわざとぶつかって来てくれてたのかと思ってたんだけど、勘違いか」

「…え?」

「先輩気付いてた?ぶつかってくる度に胸当たってたからね。」

「えぇ!!?」

「まぁこれから触り放題触るつもりだけど。じゃ、次は靴屋に行こうよ。俺がもっと良いの選ぶから」


そう言って越前君は私のアイスティーを飲んだ。か、間接キス…。


「…何赤くなってんの。これからこういう事たくさんしてくんだからね。」

「…そんな事言ってる越前君も顔赤いよ…」

「………うるさい……あ、ちょ!!!」

「ご馳走様でした、越前君。」

「にゃろう…」


仕返しにと私は越前君の頼んだカフェオレを飲んだ。越前君はふて腐れて睨んできたけれど、すぐに笑った。
ほんのり赤い顔は、きっと私も同じだろうなと思った。


















ほんのり赤いりんごがふたつ











《靴なんか選ばなくてもさ、俺の家でデートすればいいんだよね。》
《は?》
《結婚しようよ先輩。そしたらどこも出かけなくていいし》
《私達どっちもまだ年齢的にアウトだし、その考え方がすでに人権的にアウトだよ。》





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剣哉様リクのリョーマでした。

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