ボロが出た



今日の部活から私たちはそれぞれ、小型のボイスレコーダーを持ち歩くことになった。

日吉やチョタによると、超小型かつ軽量なため、テニスをしていても気にならないんだって。


部室を見渡すとよく見れば監視カメラがあるのがわかる。

この事は宍戸さんにも伝えた。



「ホントにお前らだけでいいのか?」

『はい。何かあったらすぐに呼びますから。宍戸さんは敵のフリして下さい』

「あぁ…何かあったらすぐに言えよ!!すっとんでってやるからな!!!」


『はい。』


宍戸さんが走ってコートに行くのを見送り、部室のドアを閉める。
まだ中谷先輩は来ていないようだ。

先にドリンクの準備を始めていたら、部室の扉がひらいた。



中谷先輩だった。




「こんにちは、志帆ちゃん」

『こんにちは、中谷先輩』


挨拶を返すと、私はまたドリンク作りを開始する。

あっ、そうだそうだ。
ボイスレコーダーのスイッチを入れておかなきゃ……

そう思ってジャージのポケットに手を突っ込みスイッチを押した。


しばらくは私がドリンクを作り、中谷先輩がケータイをいじる音だけが部室に響いていた。

この音はレコーダーに感知できるんだろうか…?
そんなくだらないことを考えていたら、中谷先輩がこっちに近寄ってきた。



「志帆ちゃん、若といい感じなんだってね?」

『ええ、まぁ…おかげさまで』

「二人の仲を引き離してやろうと思ったのに…また失敗しちゃった
味方になって欲しかったのになぁ〜


ねぇ、どうやったら味方になってくれると思う?」



『どうでしょうね…日吉はどうであれ、私が“若”を先輩に渡す予定がないので』


「そっか…じゃぁ、脅したりしたらいいかなぁ。
志帆ちゃんの名前出したらすぐ味方になってくれそうだよね?」

『先輩…むなしくないですか?嘘ついて作った仲間なんていても…』


「虚しくなんかないよ。皆大切に扱ってくれるもの。優しいよ?景吾も侑士も…」

『可哀想ですよ先輩』

「騙されてる皆が?」

『いいえ、先輩自身がです。』



嘘をついて得た仲間なんかに価値はない。

その嘘がとけたら、先輩は本当に独りぼっちになってしまう。
先輩はいつそれに気づくのだろう。


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