ふざけんな天然
『日吉はどうであれ、私が“若”を先輩に渡す予定がないので』
俺と鳳と樺地は西園寺からボイスレコーダーの他に、盗聴器をもらっていた。
監視カメラと一緒に部室内に取り付けたらしい。
もし、如月に何かあった時すぐに駆けつけられるようにするためだという。
中谷先輩が部室に入ったのを確認してイヤホンを耳につけた。
西園寺から支給された物は全て体の一部と化したかのように軽く、つけている感覚がなかった。
しばらくすると、中谷先輩と如月の話し声が聞こえてきた。
そして聞こえたのが冒頭の台詞。
その一言で一年分の驚きと恥ずかしさを体験した気分になった。
そしてそのまま脱力。
イヤホンを耳からはずしてその場にしゃがんだ。
鳳がニヤニヤしている。樺地が珍しく微笑んでいる。
(いたたまれない…けどヤバイ、嬉しい…)
俺が悶々と考え事をしている間に休憩時間に入っていたらしい。
如月がドリンクの籠を持ってこっちに来た。
『チョタのせいで仕事が速いよ…』
「俺のおかげでしょ?だって志帆ちゃんのドリンク粗末に扱うなんて許せないからさ。
あ、宍戸さんのはどうした?」
『ちゃんとこっそり渡してきた』
この二人はどうやらこの間鳳が先輩達を放心状態まで追い込んだ言葉の事を言っているのだろう。(外野の俺達もダメージ食らったけどな)
『あ、ねぇこれ使える?』
如月がポケットから取り出したのはボイスレコーダー。
さっき部室で録った声を聞かせようとしているらしい。
「二人の仲を引き離してやろうと思ったのに…また失敗しちゃった。味方になって欲しかったのになぁ〜
ねぇ、どうやったら味方になってくれると思う?」
『どうでしょうね…日吉はどうであれ、私が…ブチィッ!!
「(間に合った…!!)」
『え、ちょ何してんの日吉』
「いやなんでもない」
「素直じゃないなぁ」
「黙れ鳳」
不審がっている辺り、おそらくこいつは無意識でこれを言った。
何か悔しいな。
つか笑いすぎだろ鳳!!!
『ちょっと日吉?』
「何でもねーよ馬鹿!!!」
『ええ!!まだ何も言ってないのに!!!』
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