カズヒロクンとアトベクン


和博君、和博君

私の大好きな和博君。
和博君も私が好きだって言ってくれたよね?

どんなにあの時私が嬉しかったか、和博君知ってる?

私が初めて好きになった男の子。
あなたならって思えたのに、どうして。

あんなに痛かったのに。
あんなに嫌だったのに。
何度も助けてって言ったのに。

どうして見てるだけなの、そんなに楽しそうにしているの?



「和博君…」



彼を想い、私はその名を口にした。
今でも彼が好きだ。姉や妹がどんなに彼を蔑もうとも、私は彼が好きだ。

彼は言った。私に好きだと。愛していると。
あの言葉がたとえ偽りであると知ってもなお思い続ける私を姉は馬鹿だと言った。


「誰だ、カズヒロってのは」

「…!!?あ、…とべ…くん?」

「あんま無理しってとまた倒れるぞ」

「ありがとう。でも大丈夫だから」


跡部君から離れたかった。
自分のような汚い人間から、一刻も早く離れて欲しかった。

このままでは彼を好きになってしまうのがわかった。
彼と出会ったその瞬間から、私は跡部君と彼を重ねてみていた。

あの自信満々な振る舞いは彼とそっくりで、時々見える優しさに始終ドキドキして。
初めて彼を好きになった時と似ていて苦しかった。

今、彼の優しさに触れてしまえば、私は彼を好きになる。
そして彼を苦しめる。



「俺から離れるのか」

「…元からそんなに仲良くないでしょ?」

「離れねぇぞ、俺は」

「離れるも何も…」

「俺はお前の傍にいる。一緒にいる。」

「………何で」

「…当ててみろよ」

「わけわかんないよ、跡部君。」


なんだか面白くて笑ってしまった。
そしたら彼が乱暴に髪をぐしゃぐしゃにして頭を撫でてきたものだから、今度は泣きそうになった。


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