夏が来た
夏が来た。
私の嫌いな夏が来た。体に張り付いたブラウス、汗でベタベタの体。
それがあの夜と被りに被って嫌になる。
「何ボケっとしてんだ」
「…何よ私に気安く話しかけないでって言ってるはずなんだけど」
私の隣の席の跡部景吾はただのバカだと思う。
これだけ私に近寄るな、話しかけるな、と言っているのに何でこう近寄ってくるんだろうかこの男は。
今までの馬鹿共は頼んでもないのに私を取り囲んだのに。
「これだけ頼んでるのに何で…」
「あ?聞こえねぇよ」
「聞かなくて結構。てか近いのよ。もっと離れて暑苦しい」
「可愛くねぇな」
「…知ってるわ」
“可愛くねぇな”
その響きがなんか懐かしくなって泣きたくなった。
私は神様を恨んでる。神様も私を恨んでる。だからきっとこんなにひねくれまくってるんだ。
どうしてあの人なの?私には彼しかいなかったのに。
何で行っちゃったの?何処に行っちゃったの?
飛行機で行ける?車で行ける?それとも船?
ねぇ神様、どうしてあなたは私の大事なものを取っていったの?
会いたいよ…ねぇ和博君。聞こえてる?
―夏編―
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