無理が祟って
テニス部に入部してから2ヶ月経った頃だろうか。
部員のほとんどが四那賀さんではなく、それぞれ私たちを名前で呼ぶようになった頃だ。
朝は四時に起き、母の分も含めて五人分のお弁当を作り、洗濯物をし、朝食を作り、朝練に間に合うように準備をして出かける。
昼は授業を受け、お弁当を食べ、午後の授業を受ける。
放課後は部活を19時まで、日によっては20時まで行い、ダッシュで家に帰る。
夕食の買い物をし、洗濯物を取り込んで、夕食を作り、しばらくすると妹達が帰ってくるので一緒に食べる。
お風呂の準備をしている間に夕食のものを片付ける。
その後お風呂に入り、あがったらその日の予習復習を済ませている間に母が帰ってくるので夕食の準備。
次の日のお弁当のために炊飯器にご飯をセットしておく。
そして学校に行くために朝四時に起きる。
全ての家事を済ませて就寝するのは大体夜中の二時。
平均睡眠時間は二時間。こんな生活が何ヶ月間か続いた。
自分は健康体であると自負していた。少しくらい睡眠時間が短くても大丈夫だと高を括っていた。
朝から気分があまり良好ではなかったからなのか。今日、ついに部活中に。
私は倒れた。
「春樹、大丈夫?」
「…は、ぎ………?」
目が覚めて一番最初に見たのは萩の顔だった。
場所は部室のベッドで、起き上がろうとしたら萩に制された。大人しく従って私は再度枕に頭をつけた。
「吃驚したよ。いきなり倒れるから」
「ごめん…夏美達は?」
「仕事してる。俺が見てるから大丈夫だって言っておいた。」
「そうか…」
「…泣いてたよ、夏美」
「………」
「…ねぇ春樹、聞いてもいいかな?」
「何を?」
「…君の事をだよ」
「私の事?」
萩がまっすぐ私の目を見据えてそう言った。
その目はあの時の父の目にそっくりで私はゾクリと震えた。
「この何ヶ月間か君と一緒に居て感じた物があるんだ。」
「…何?」
「何を隠してるの?」
再度ゾクリと震えた。
“何”とはきっとあの時の事だろう。
最愛の夫を亡くした母。そして大好きな父を亡くした妹達。
私のせいで奪われた大事な人の命。
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