黒いもやもや処理係
朝、学校に来ると教室に甘い匂いが漂っていた。
クラスの女子が跡部宛に何か作ったのか?そう思って席に着いた瞬間一層強くなった甘い匂い。
そしてタッパーを抱えて春樹がこっちに来た。
甘い匂いはこいつからだった。
「萩、亮これ作ったんだけどいる?」
「クッキー…?」
「春樹が作ったの?」
「うん。別に、無理にって訳じゃないんだけど…」
「いる!!いるいるいるーー!!!」
「え、ジロー?」
「芥川君もいる?」
「いる!!」
ジロー襲撃。
さっきまで机につっぷして寝ていたジローがいきなり起き上がって春樹に詰め寄った。邪魔しやがって…そう思う反面、まだ春樹がジローの事を芥川と呼んでいる事に少しだけ優越感を感じた。(宍戸の事も名前で呼んでるけど…)
春樹のクッキーを口に入れると、サクッと良い音がした後ほのかに甘いものが口に広がっていった。これは紅茶に合いそうだ。
「美味しいよ、春樹」
「ありがとう萩」
「おいC!!」
「良かった」
「春樹大好き!!」
「おいジロー!!」
「えへへ、春樹良い匂いー」
ニッコリ笑った春樹に気持ちが穏やかになった瞬間、ジローが春樹に抱きついた。春樹自体は全く何でもない様な顔をしてジローの頭を撫でている。
宍戸は驚きでジローを止めようとしたし、俺は俺でどんどん黒い何かに生まれていく感覚に襲われてる。
てかいつの間に名前で呼んでんだ。
「お、おい滝…なんかお前変なオーラ出てんぞ…」
「ジローのせいだけじゃないからね、宍戸」
「え、俺?」
その黒いもやもやは、とりあえず宍戸にぶつけてみた。
依然として春樹にべったりくっついているジローは今日の部活で制裁を下そうと思う。
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