俺様野郎の魔の手から守り隊隊長に立候補



「昨日はありがとう跡部君」

「春樹ちゃんってばこんな奴にクッキーあげるためにあんな遅くまで起きてたのね!!」

「夏美達の分もあるよ」

「なかったら発狂してる!!」


昨日妹達を送ってくれた礼だと言って長女がクラスに来た。
手渡されたのはクッキー。甘い匂いがした。


「おい長女」

「何?」

「これお前が作ったのか?」

「うん」

「そうか。ありがとよ」

「喜んでくれてよかった。じゃあ私帰るから。」


用件を済ませて帰って行った長女。
袋を開けてクッキーを一つ口に運ぶと程よい甘さが口の中に広がった。


「美味いな…」

「あたりまえじゃない。春樹ちゃんが作ったんだから」

「食うか?」

「…いる」


袋から一つ取り出して口に運んでやると、この珍獣め。あろうことか俺の指ごと食った。


「いってぇ!!!」

「春樹ちゃんにデレデレすんな!!」

「何で俺様が長女なんかに!!」

「長女なんかにって言うな!!」

「一体どっちだお前は」

「どっちもだ!!」

「あ、おい夏美!!」

「え…?」


珍獣の動きが止まった。

俺の手からクッキーを取り上げ、自分で食べようとした夏美を制しただけだったはずだったのが、何故こんなぴくりとも動かなくなったのか。


「い、今…名前」

「アーン、名前?夏美だろ」


そう言った瞬間わなわなと震え、夏美は叫んだ。


「名前で気安く呼ぶなこの俺様野郎!!!決めた!!私決めた!!」

「な、何をだ…」

「春樹ちゃんを跡部景吾の魔の手から守り隊の隊長になる!!もうお前春樹ちゃんに近づくなバーカ!!!」


珍獣の猛々しい雄叫びはクラス中に響き渡り、転校早々クラス全員から珍獣のレッテルを夏美は貼られた。


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