入部初日D
「あれ、早かったね」
「部長の跡部君に送ってもらったんだよ」
「そうか…まだいる?」
「もういないわ」
「…どうしたんだ夏美」
「…何でもない」
夏美が不機嫌だ。
さっきまで普通だったのに、今はものすごく機嫌が悪い。
夏美は喜怒哀楽が割と激しいほうだ。私たち姉妹のうち誰かが泣かされたら一番に怒ったのは夏美だった。
どんなに体が大きい人でも、年上でも関係なく立ち向かって行ったのは夏美だった。
誰かが悲しければ悲しくなって、嬉しければ嬉しくなって。夏美は一番表情が豊かな子だ。
「ごめん春樹ちゃん、私ご飯いらない」
そう言って夏美は部屋に行ってしまった。
慌てて呼び止めようとしたが、それは冬香に止められてしまった。
「春樹ちゃん、夏美ちゃんのご飯は私が後から持って行くから今はそっとしておいてあげて」
「…わかった」
いつの間にか食事の準備を手伝ってくれていた秋音と合流し、私も残りの支度をすべて片付けた。
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