入部初日@
テニス部の部室はとてつもなく大きかった。
そして、私たちがコートに入った瞬間、部長の跡部君は青ざめた。
「ど、どどどうしてここにお、おめえがいんだ…!!!」
「何でって、今日からマネージャーなので」
原因は夏美らしい。
私はため息をついてニコニコ笑っている夏美とどんどん青ざめていく跡部君の間に入った。
「いきなりごめんなさい。今日からテニス部にマネージャーとして入部する事になったんです。」
「………」
「あれ、四那賀じゃん。」
「…宍戸、滝」
「何してんだよこんな所で」
「いや、入部したんだけど、彼今放心状態で話を聞いてないみたいなんだ」
「放っといていいと思うよ。」
「いいのか?」
「うん。それよりマネージャーが一気に四人も入ってくれるなんて歓迎だよ。」
「ありがとう。役に立てるかどうかはわからないけど頑張るよ。」
「仕事は僕が教えるのでいいよね跡部。」
「………」
「良いって。」
何もいわない跡部君の事は誰も心配しないらしい。
本当に放っておかれている。
滝に着いて私たちは部室へ向かった。中は高級ホテルかと思うような大理石の壁に、赤い絨毯。
呆気にとられていると滝が振り返って苦笑いした。
「本当限度ってものをしらないよね、跡部は」
「これ跡部君が…」
「あぁ、あと監督」
「…おじさんまで……」
「監督と知り合いなの?」
「あ…父と、仲が良くて…。」
「そうなんだ。で、ごめん四那賀さん名前で呼んでもいい?」
「もちろん」
「そういえば四那賀さんって四人いるからと思ってね。」
「ごめん、自己紹介しないとだな」
夏美に目配せして自己紹介をさせる。順に秋音、そして冬香が名乗った。滝は自分も自己紹介をして、仕事の説明をし始めた。
手際のいい作業とわかりやすい説明。私たちへの説明を一気に終えた滝は練習に戻るね、と言って部室を出て行った。
「滝君は春樹ちゃんと同じクラスなんだね」
「あぁ、あと宍戸もだ」
「いいなぁ、私なんて酷いのよ?跡部君ってば私の顔を見るや否や嫌な顔するんだからぁ」
「それは自業自得だ」
作業を進めながら私は考えていた。
四人一緒の部活に入って、しかもそれは運動部で。
一体誰が夜ご飯を作って、大方の家事をするのだろう。母さんは仕事で忙しいから出来ない。
私だけはここにいたら駄目なんじゃないか?
楽しそうな妹達を見て、私は少し複雑な気持ちになった。
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