目の前にせまる





ねぇ準太、何隠してるの?
どうしてそんなに辛そうに眉を顰めているの?

何かいやな夢、見てるの?
その夢に、私は出てきている?


「…ん」

『準太!!』

「名前…カズさん……」

「やっと目が覚めたか」

「俺…」

「今日はもう部活休め。」

「でも…」

「休め。そんな体じゃピッチングもできないだろ。」

「…はい」

「うん。名前、お前も今日は部活休んで準太家に送ってやってくれ」

『…わかりました。』



カズさんは泣いて目が赤くなっているだろう私の頭を撫で部活へ向かった。
まだ複雑そうな顔をしている準太の方を見ると、準太は私と目を合わせて苦しそうに微笑みごめん、と謝った。


「心配かけちゃったな」


そう言って準太も私の頭を撫でる。
ピッチャーの、手。ゴツゴツしてて大きくて安心する。


『…どうして?』

「名前?」

『どうして、そんな顔するの?』

「…いきなり何だよ」

『行くなって何?一人にしないでくれって何?』

「………っ」



準太はばつが悪そうに顔を背けた。
何よその反応。まるで聞かれたくなかったような、そんな顔。


「別に、お前には関係ねぇよ」

『関係ない?本当に?じゃあ何であんな苦しそうに笑うの…。私準太に何かしたの?』

「してねぇよ。お前は何もしてない。全部、俺が悪い。」

『…俺が悪いって…どういうこと、それ』

「何でもない。帰ろうぜ、せっかくカズさんが気遣ってくれたんだし。」


ベッドから出て私の横に立った準太がそう言った。
本当はここから今すぐ立ち去りたかった。
準太の馬鹿って言って走り去りたかった。でもできなかった。

カズさんに準太を任された事も理由の一つだけど、本当は怖い。


準太が私に何か隠してることも、またさっきみたいに倒れたりするのも怖い。
準太に関して知らない事があるのが怖い。